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変わるニュース報道 データ分析やビジュアル化

藤村厚夫・スマートニュース執行役員

ニュース(報道記事)の読み方・書き方が変わろうとしている。新聞やテレビ、ラジオ、雑誌の「4マス」によって成熟化してきた報道形式が、インターネットの台頭で大きく変わると指摘されて久しい。最近の動向を見ていると、報道形式の革新はいよいよ、これからが本番と感じさせる。

5月、米大手新聞社ニューヨーク・タイムズ(NYT)のプロジェクトチームが取りまとめた内部改革リポートが漏洩してメディア業界に激震が走った。イノベーションや最新の技術を積極的に取り込んできたNYTでさえ、ネットの荒波に直撃を受け、もがき苦しんでいる様子が白日の下にさらされたからだ。

これには交流サイト(SNS)などソーシャルメディアとモバイルの隆盛が深く関与している。ソーシャルメディアがニュースを目にする入り口となれば、読者が自らニュースサイトを訪れて記事を選ぶような読み方は衰える。スマートフォン(スマホ)でニュースに触れる読者は、小さな端末に最適化した情報源を好むようになる。いずれにしても既存の報道メディアが従来通りの読み方、書き方を堅守したニュース報道を続けるかぎり、かなりの離反者を生み出しかねない。

これから重要になるのは、どう変化させていくかだ。読者やその背景の変化に適合しようと新しいニュースの書き方や読み方を模索する努力が各地で巻き起こっている。

大手新聞社側で目立つのは記事、写真、動画、音声などを総合して表現力を高める手法だ。米国ではピュリツァー賞を受賞したNYTのドキュメンタリー作品「スノーフォール」、日本では朝日新聞の「浅田真央ラストダンス」などが登場した。

 NYTを飛び出したネイト・シルバー氏が興したニュースサイト「ファイブサーティーエイト」はデータ分析を重視しニュースを掘り下げる「データジャーナリズム」と呼ばれる手法で注目を集める。マレーシア航空機失踪事件を扱った分析記事は評価が高かった。

ふじむら・あつお 法政大経卒。アスキー系雑誌の編集長、外資系IT(情報技術)企業のマーケティング責任者を経て2000年にネットベンチャーを創業、その後の合併でアイティメディア会長。13年から現職。東京都出身、60歳。

他方、NYTは「アップショット(要するに、の意味)」を始めた。やはりデータを重視して見やすくビジュアル化する卓越した手法だ。米国の雇用動向を壮大なチャート図で示した記事は話題を集めた。日本でもハフィントンポスト日本版がサッカーワールドカップ(W杯)の日本代表戦について、データを駆使して掘り下げ、タイムリーに論じて称賛された。

データや表現力を重視した新興メディアの動きは「解説型ジャーナリズム」とも呼ばれる。ニュース報道や論説でなく、ニュースへの理解や視点の広がりを目指す動きだ。国内ではニュースの易しい解説に焦点を当てたニュースサイト「ザ・ページ」が誕生した。

一方、スマホなどモバイル機器向けのニュースは百花繚乱(りょうらん)の様相だ。米国のニュースアプリ「Circa(サーカ)」は、ニュースをコンパクトな要素に分解、それぞれカードのように執筆して読みやすくした。日本ではアプリ「Vingow(ビンゴー)」が記事の自動要約に挑戦している。同じく「カメリオ」は膨大なテーマを用意し、読者が選択したテーマに関連するニュースを継続的に受け取れる仕組みを持つ。

スマホやウエアラブルなど端末の技術的進化にも触発され、今後も新たなニュースの読み方、書き方が次々と誕生するだろう。その変化の勢いはおそらく、ネットで新聞社のニュース記事を読むようになった変化など大したことなかったと思えるほどに違いない。

[日経MJ2014年6月30日付]

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