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廃炉技術、世界で共同研究を 安全向上待ったなし

編集委員 安藤淳

東京電力福島第1原子力発電所の事故から3年が過ぎ、廃炉へ向けた作業が進み出した。溶け落ちた燃料(デブリ)の回収法などのアイデアが多数集まる。廃炉技術や原子炉の安全性向上を目指す研究開発には、米欧に加えて中国や韓国も力を入れる。事故の教訓を最大限生かし、原発を使いこなそうとの思いが強い。

海外から技術情報の提供相次ぐ

ブラックボックスに近かった福島第1原発1~3号機の炉内の様子が、少しずつわかってきた。国際廃炉研究開発機構(IRID)の山名元理事長によると、1号機の燃料はすべて原子炉圧力容器から格納容器に溶け落ち水没しているもよう。2号機は一部燃料が圧力容器に残っているとみられる。

3号機も圧力容器に燃料が残った可能性があるが、水位はかなり高いようだ。デブリの安全な処理には格納容器を水で満たし、冠水させて水中で切断や回収をするのが理想的とされる。3号機はある程度の作業を水中でできる可能性がある。しかし、それ以外は水漏れを止めにくく冠水が難しいとの見方も出ている。

冠水できない場合、どんな代替工法を使うかはデブリ取り出しの大きな課題の一つだ。IRIDは4月下旬から技術提案を募る。その参考とするため昨年12月半ば以降、国内外の企業や研究機関から技術情報を寄せてもらい、今年1月末までに約200件が集まった。約4割は海外からだ。

内容は炉内の観察、遠隔操作技術やデブリの切断、破砕法、水以外の遮蔽材を使って取り出す方法など多岐にわたる。短期間にこれだけ集まるのは、各国で廃炉技術などの研究開発が活発化している証しでもある。IRIDは米欧ロシアなどの専門家で構成する「国際エキスパートグループ」から助言を得ており、海外での認知度も高まりつつある。

一方、事故発生時に炉内でどんな化学反応が起き、海水がどう影響したのか、デブリの成分や動きの現状はどうか、などは依然として正確な把握が難しい。コンピューターによる模擬計算などで推定しており、精度向上が課題だ。

脱原発でも原子炉の研究は活発

世界で使われてきた、炉内の水や燃料の状態を計算するプログラムは燃料が圧力容器を突き抜けて下に落ちる事態を想定していない。米テキサスA&M大学のヤッシン・ハッサン教授は「実験で現象を理解しつつ計算法を改善する必要がある」と指摘。理論・実験の両面から研究を急ぐ。

欧州ではドイツ、イタリア、スイスが脱原発の方針だが「原子炉の研究は活発。イタリアも周辺国に人材を供給している」(二ノ方寿・伊ミラノ工科大学教授)。フランス原子力代替エネルギー庁(CEA)も廃炉関連技術や安全研究を強化、IRIDにも複数の技術情報を寄せている。

原発の増設を計画する中国や韓国も、福島第1原発事故を教訓に安全技術の向上を目指す。韓国科学技術院は事故で冷却水中に漏れ出した放射性物質を、効率よく除去する技術を考案した。ナノ(ナノは10億分の1)メートルサイズの酸化鉄微粒子で吸着し、磁石の力で集めるという。

中国政府も過酷事故対策研究などの大型プロジェクトを進める。現在は多様なタイプの炉が混在しているが、徐々に絞り込み統一的な対策を実施しやすくするという。上海交通大学の研究者は「日本などの経験を生かせるよう、一層の共同研究を」と求める。福島第1原発の内部状況のデータや計算との比較結果を広く国際共有することが、安全性向上や優れた廃炉技術につながる。

[日経産業新聞2014年3月27日付]

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