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アマゾンが挑む生鮮宅配 「最速」物流へ技術駆使

瀧口範子氏(フリーランス・ジャーナリスト)

米サンフランシスコ市内を車で走ると最近、「アマゾン」のロゴがある緑色の小型トラックをよく見かける。アマゾン・ドット・コムの生鮮食料品宅配サービス「アマゾン・フレッシュ」の配送車だ。現在は本社のあるシアトルやサンフランシスコ、ロサンゼルスと米西海岸の限られた都市だけで展開するが、実は同社がどうしても成功させたいビジネスでもある。

サンフランシスコ市内を走るアマゾン・フレッシュの配送トラック

生鮮食料品のオンライン販売は米国でも「最後のフロンティア」とされてきた。ドットコム・バブルのピークだった1990年代末には「ウェブヴァン」というオンライン・スーパーが登場。最先端のコンベヤー設備を配備した巨大配送センターをシリコンバレーに建設した。配達は30分ごとに指定でき、実際にかなり質のよい新鮮な野菜や果物を配達していた。

しかし、大規模な施設の運営と需要のバランスが取れずに倒産。ウェブヴァンの挫折は、今でもオンライン・ショップがリアル(実)世界の障壁を越えることの難しさを物語るケースとして挙げられる。

だが、アマゾンは本拠地シアトルの一部地域で生鮮食料品の宅配サービスのテストを実施、ノウハウを蓄積してきた。昨年、地域を拡大した際には、高い会費が払える住民がいる都市を見定めて展開を始めたようだ。

扱うのは肉、魚、野菜、果物のほか、ペットフード、地元のベーカリーやケーキショップの商品、シャンプー・洗剤など日用品だ。もちろんアマゾンで売れ筋の書籍やエレクトロニクス製品、事務用品、おもちゃ、自動車用品も含めて50万点から選べる。

 面白いのは配達だ。注文の時間にもよるが即日か翌朝6時までに配達する。冷蔵庫は空っぽなのに買物に行けない日や、朝食のミルクがないなどの場合にとても便利だ。年会費299ドル(約3万600円)、最低注文総額35ドルからで、必要な時に生鮮食料品を玄関先まで届けてくれるのだ。

たきぐち・のりこ 上智大外国語(ドイツ語)卒。雑誌社、米スタンフォード大客員研究員を経てフリージャーナリストに。米シリコンバレー在住。大阪府出身。

アマゾンの動きに追随したのがグーグルだ。地元シリコンバレーで「グーグル・エクスプレス」を始めた。いずれも挑戦しているのはリアル世界の「ラスト・ワンマイル」だ。生鮮食料品の即日配達は小さな業者がニューヨークのマンハッタン地区など大都市の一部で手掛ける例があった。だが、国土が広大な米国では日本の宅急便のような安価で小回りのきく配送手段は今もない。

これからのオンライン・ショップで決め手となるのは、比較的小さな配送センターを消費者の至近距離に多く配置し、テクノロジーによって最速で届けることだといわれる。アマゾンは全米に設けた配送センターからいかに最短時間でユーザーの元へ物品を届けるかに挑んでおり、アマゾン・フレッシュでは自らが配送業者になって実現しようとしている。

テクノロジーでは、アマゾンがドローン(無人航空機)を使って30分以内の配達を考えれば、グーグルはロボット技術を利用して配送センターと配達の大幅な効率化を図ろうと、しのぎを削る。決して未来の夢物語ではない。現実世界をクリックの速さに近づけるこうした試みが成功すれば、オンライン・ショッピングはほぼ完成の域に達したと言っていいだろう。

[日経MJ2014年4月28日付]

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