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ヤフーも驚くSNS援軍 セルビア募金成功の裏側

(村山らむね)

セルビア共和国は5月中旬に発生した集中豪雨と、それに伴う大洪水により甚大な被害を受けて人命が失われた。今なお多くの被災者が避難生活を余儀なくされている。苦境のセルビアを支援しようと、ヤフーが「ヤフー・ネット募金」で5月22日に始めた「セルビア豪雨緊急支援募金」は、6月30日までの40日間に延べ6万人以上から9千万円を集めた。

セルビアの洪水を伝えるバイラルメディア「グレープ」のサイト

ヤフーは集金額とほぼ同額を寄付するマッチング募金の形式を採用。このため総額1億7千万円以上をセルビアに贈ることが決まった。目録をネナド・グリシッチ駐日セルビア大使に渡す贈呈式も予定されたが、7月に日本を襲った台風8号のため延期された。これは残念だったが、募金の成功はネット界の注目すべき潮流が大きく影響したことを浮き彫りにした。

ヤフー・ネット募金の担当者、松本裕也氏に成功の要因を聞くと、(1)エピソード(2)信頼性(3)手軽さ(4)バイラルメディア――の4つを挙げた。

まず(1)エピソード。セルビアは東日本大震災の際、セルビア赤十字を通じて1億9千万円以上の義援金を送ってくれた国だ。ネット上で「今こそセルビアに恩返しをしよう」と呼びかけが広まった。平均月収300ユーロ(約4万円)だが親日国で、震災後にいち早く行動してくれたエピソードは日本人の心を動かした。

(2)信頼性ではヤフー側が透明性の確保に留意した。募金額をほぼリアルタイムに表示。マッチング募金も信頼性と募金する人の達成感を高めた。(3)手軽さでは「T―ポイント」など共通ポイントを1ポイント=1円として募金できる仕組みが、特に20代から気軽に善意を表現できると支持された。

最後の(4)バイラルメディアに注目だ。これは面白い記事や画像、動画など、ツイッターやフェイスブックといった交流サイト(SNS)で「ついシェアしたくなる」話題を集めたメディアだ。新聞社やニュースサイトの記事を簡潔にまとめたものも多く、ニュースとSNSをつなぐメディアとも位置付けられる。米国では「バズフィード」や「アップワージー」が急成長中で、日本でも数十のバイラルメディアがしのぎを削っている。

 セルビア募金の場合、5月22日の開始からしばらくは100万円ほどで伸び悩んでいた。ところが、セルビアの震災支援のエピソードと洪水被害や募金活動を、今年4月に始まったばかりのバイラルメディア「grape(グレープ)」が記事化。ヤフーの募金サイトにない洪水の被害を伝える動画も紹介すると、ツイッターで言及が4000を超え、フェイスブックでは10万以上「いいね!」された。その後も複数のバイラルメディアやブログが自発的に記事を書くと爆発的に拡散し、募金額が急増した。

 むらやま・らむね 慶大法卒。東芝、ネットマーケティングベンチャーを経てマーケティング支援のスタイルビズ(さいたま市)を設立、代表に。

ヤフーは国内ネット界で「王者」的存在。これまで他サイトに送客こそすれ、逆に他サイトから恩恵を受けることは少なかったが、バイラルメディアの威力には驚きを隠せないようだ。

今後あらゆるサイトが集客を考えるうえで、バイラルメディアの拡散力は見逃せない。大手資本が入るベンチャーだけでなく、個人が運営するものも多い。動画やペット画像、笑えるネタなど、テーマを設けたバイラルメディアが人気だ。既に脱落したものもあり、今後はどこが生き残るかも注目される。

瞬間的に誰かに教えたい、心を動かすコンテンツがSNSで、あっという間に拡散し募金や購買などにつながる。スマートフォン(スマホ)の普及で、この影響力はますます拡大しそうだ。

(通販コンサルタント)

〔日経MJ2014年7月25日付〕

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