針に入る極細内視鏡 「福島育ち」、患者負担軽く

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2014/5/26 7:00
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直径0.35ミリの極小レンズでも画像は1万画素

直径0.35ミリの極小レンズでも画像は1万画素

レンズは130種類ある光学ガラスの中から選び出す。映し出す範囲に応じて屈折率を変え、許容される色のにじみ具合なども勘案しながら用途に合った非球面レンズを採用した。形状が複雑だが、重ねる枚数が少なくてすみ、薄くて色や焦点のずれが少ない利点がある。「金型製造技術だけではなく、独自の治具の開発や金型を傷めないようにガラスの融点を低くする技術も求められた」と高野工場長は説明する。

内視鏡でライトの光を伝送する光ファイバーの直径は、女性の細い髪の毛より細い0.05ミリ。体内の画像を伝送するファイバーは0.005ミリだ。それらを内部で束ねている。これほど細くても内部は内側と外側で屈折率が異なる2層構造にしてある。屈折率が異なると、池などの水が太陽光を反射するように、ファイバーの中で光がジグザグに反射を繰り返しながら遠くまで届く。ファイバーの数が多いほど精細度が上がるので、ここでも独自の技術を生かしている。ファイバー製造部LG課の菅家守人課長代理は「6本を蜂の巣状に並べた『細密六方積み』を隙間なく組み合わせた構造で全体の密度を高めた」と説明する。この方式で1万本の画像用ファイバーを組み込み、1万画素を実現させた。

■医療機器産業の集積地

熟練工がクリーンルームの中でレンズを検査する

熟練工がクリーンルームの中でレンズを検査する

田島工場がある福島県は、医療機器産業の集積を再生可能エネルギー関連産業の育成と並ぶ産業復興の柱に位置付けている。厚生労働省によると、福島県の2012年の医療機器生産額は全国4位。主な生産品目はMRIのような大型の観察機器ではなく、鉗子や注射器などが中心で、同年の受託生産額は全国1位だった。医療機器産業をさらに拡大する基盤ができているといえる。世界全体では、医療関連機器の市場ではカテーテルなど体内に入れる治療器具の需要が大型の観察機器の需要を上回っている。日本はこの流れに乗り遅れた。このため厚労省によると、12年の医療機器の貿易収支は約7000億円の赤字になった。

福島県では、こうした劣勢を挽回する一翼を担おうと、大型の動物実験施設「医療機器開発・安全性評価センター」(仮称)を郡山市で年内に着工し、16年度に完成させる。カテーテルや人工心臓関連機器などの生体適合性や電気安全性、物性などの試験条件は米食品医薬品局(FDA)の基準を満たすようにして、米国に製品を輸出しやすくする。同県はこのセンターを1つのシンボルに医療関連産業の集積を進める方針だ。住田光学ガラスも福島県の補助金を受けている。開発した極細の内視鏡は、福島県で医療産業を拡大させる先駆けの成果といえる。

(企業報道部 佐藤敦)

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