まるでライブ 起業イベントが映す若者の仕事観 編集委員 石鍋仁美

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2014/3/25 7:00
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起業家が自分のアイデアを大勢の前でプレゼンテーション(披露)し、協力者や出資者を募る。「ピッチイベント」と呼ぶこうした催しが盛んになりつつある。プレゼンというと会議室にスーツという風景を想像しがちだが、ライブハウス風の空間で拍手喝采が起こる、盛り上がるイベントだ。聴衆には起業にあこがれる若い世代も多い。消費と対極にあるように見える起業イベントは、「仕事」と「生活」が融合する若者消費の明日を映している。

■起業家のための秘密基地

先月、次世代型ピッチイベントの1つをのぞいてみた。場所は東京・目黒の「HUB Tokyo(ハブ・トウキョウ)」。昨年開業したコワーキングスペースだ。起業家とその予備軍が机を並べて働くオフィスの隣に、広いイベント空間がある。ピッチイベントはそこで開かれた。

ピッチイベントにTシャツ・ジーパンで登壇、全身を使い出資者・協力者を募る起業家(東京・目黒の「HUB Tokyo」で)

ピッチイベントにTシャツ・ジーパンで登壇、全身を使い出資者・協力者を募る起業家(東京・目黒の「HUB Tokyo」で)

オフィスもイベント空間も印刷工場の跡地。壁や天井はほぼ昔のままで、起業家のための秘密基地を思わせる。HUBとは2005年に英国で生まれた世界的な起業家向けコワーキングスペースのネットワークのことだ。スペースはそれぞれ独立運営。情報やアイデアの交換などで協力する。

日本の第1号がここ。開業メンバーの中心は元コンサルタントの30代の女性だ。

この日の「ピッチャー」(プレゼンの当事者)第1号はTシャツ姿の青年。神奈川県の湘南を拠点に子供たちが泥だらけで遊ぶイベントを開いている。遊びのノウハウや道具をネットで提供して家庭で楽しんでもらうというアイデアだ。「泥だらけで遊ぶのって楽しいんですよっ」。こう宣言するや自らペンキをかぶってみせた。観客は拍手喝采だ。

続いて大手企業の社員2人が「会社には内緒で」登壇。家庭で発酵食品を作るキットの開発や販売を計画中だ。次はフランス人男性。日本語を習得する体験から文章表示と音声を組み合わせた読書支援ソフトを開発した。介護にも応用できると力説する。「内気なので」と、日本人女性が横に立って代わりにしゃべる趣向も笑いを取る。

客席にイスなどはない。約100人の聴衆は、固い床や端に積んである板の上に座る。もしくは立ったまま聞く。熱気が会場を包み、イスがなくても苦にならない。5組の登壇者のうち優勝者を決めるのは専門機材で計測した拍手の大きさ。ピッチャーも熱が入る。

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