ソニー、ウエアラブルで決済 「小型フェリカ」開発
ソニーは2015年にウエアラブル機器に搭載できる非接触IC技術「フェリカ」を実用化する。デジタル家電メーカーは、おサイフ決済や個人認証などの機能を備えた時計やリストバンドといった端末を開発できるようになる。東南アジアや欧米でも日本の電子マネーが使えるチップも開発する。フェリカの決済額は国内で年3兆円を超えた。買い物や認証が「かざすだけ」で済む便利さが一段と広がりそうだ。

ソニーと子会社のフェリカネットワークス(東京・品川)が17日、都内で開いたフェリカの技術展示会で明らかにした。
ウエアラブル機器はソニーやセイコーエプソン、韓国サムスン電子などが時計型やリストバンド型の新製品を発売している。今後、急速な市場の成長が見込まれる。ソニーはウエアラブル機器向けに小型・省電力にしたICチップを開発し15年にも実用化する。
例えば会計時に時計型端末を読み取り機器にかざすだけで電子マネーで決済できる。フェリカは個人認証の機能を備えており建物の入退出管理にも応用できる。フェリカ搭載のウエアラブル機器ならポケットからカードや携帯電話を取り出す手間がなくなる。
カード型フェリカでも新世代版を出す。小型液晶画面のあるフェリカカードを開発した。本体を指でなぞるように動かすと画面で利用履歴や残高を確認できる。電子マネーやポイントカードなど財布のなかでかさばる複数のフェリカ対応カードが1枚に収められる。
米アップルの「iPhone(アイフォーン)」のように非接触IC技術に対応していないスマートフォン(スマホ)でもブルートゥースでつないで決済機能を使えるようにする。

小売業界が新たな販売手法と位置付ける「オムニチャネル」の対応も進める。実店舗やネット通販、SNS(交流サイト)などあらゆる販路で顧客と接点を増やし商品を売る仕組み。例えば消費者をクーポンやポイントを配るサイトに誘導し関連情報をフェリカ搭載のスマホに自動配信する。消費者はクーポンの取得の面倒な操作をせずに読み取り機にフェリカをかざすだけで済む。
薄型テレビなど消費者向けエレクトロニクス事業が苦戦するソニーにとって、フェリカは安定して稼げる企業向けビジネスの柱のひとつ。ただフェリカは日本では非接触ICの標準規格にはなったものの世界の主流は欧米の規格。フェリカ対応カードが海外で普及しないのもこのためだ。
そこで同社は欧米規格とフェリカをひとつのチップにまとめられる多機能カードも来年度中に実用化する。日本人旅行者が欧米で電子マネーを使えるようになり、訪日客も日本で電子マネーで気軽に買い物できる機会が増える。フェリカ対応のカードが海外でも広がれば、それを基盤にクーポン配信など消費者向け新サービスの商機が世界規模で見込める。
将来は自動車のドアやエンジンの鍵の代替に応用したり、フェリカ搭載の健康器具とスマホを組み合わせた新しい健康管理サービスなども視野に入れる。お薬手帳をフェリカで電子化する技術も開発中だ。
現在フェリカは世界でモバイル端末内蔵型とカード型の合計で年7000万個規模で出荷している。中期的に年1億個規模に引き上げる考え。
1枚のカードに決済やポイント、個人認証など複数のサービスを載せられる。ICチップの累計出荷数(2014年6月末)はカード用が5億2700万個、モバイル端末用が2億4500万個を超える。海外では東南アジアを中心に採用が広がっている。