2019年8月23日(金)

格安航空、機長不足で逆風 ピーチに続きバニラも減便
成長シナリオに暗雲

2014/5/16付
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国内格安航空会社(LCC)の間でパイロット不足が深刻化してきた。ANAホールディングス傘下のバニラ・エアは16日、6月に計154便を減便すると発表した。パイロットの不足を理由に減便するのは、ピーチ・アビエーションに続き2社目となる。LCC各社は人材確保に躍起だが実現は難しく、成長シナリオに暗雲が漂い始めた。

■病欠・退職重なる

記者会見で謝罪するバニラ・エアの石井社長(左)(16日、国交省)

記者会見で謝罪するバニラ・エアの石井社長(左)(16日、国交省)

「後発で運航実績がないため採用の力が弱かった」。16日に記者会見したバニラの石井知祥社長は頭を下げると、減便についてこう釈明した。

同社では26人の機長が必要だが、採用がなかなか進まないところに病欠や退職が重なり、6月に23人に減ることが判明。成田―那覇と成田―新千歳の2路線の減便に追い込まれた。減便は同社の全便数の2割。減収の規模は1億円の見込みだ。

LCCのパイロットの報酬は乗務時間に応じて決まる。先行する他社が月70~80時間なのに対し、昨年末就航したばかりのバニラは当初平均で月30時間前後。報酬が少ないためパイロットにとって魅力が低く、「採用が計画通りに進まなかった」(石井社長)という。

LCCでは、関西空港を拠点とするピーチも4月、10月までに2千便超を減便すると発表したばかり。公共交通機関の航空業界でこれほどの減便が続くのは異例だ。

先に減便を決めたピーチも事情は似ている。

「病欠で2人の機長が搭乗できなくなる」。4月12日、運航部門のスタッフが幹部に送った1通のメールが社内に波紋を広げた。52人の機長のうち病欠者は8人。予定していた今夏の増便ができず「減便が必要」。報告を受けた井上慎一最高経営責任者(CEO)は「想定したよりも規模が大きい」と驚いた。

2012年3月に3機体制で運航を始めたピーチ。当初は経営破綻した日本航空を退職したパイロットが大半を占めた。2年で12機、16路線まで急拡大したものの、「パイロット(機長、副操縦士)の確保はいつも綱渡り。理想の人員数が採用できずに事業計画を見直してきた」と村主典陽人事部長は打ち明ける。

背景には、世界的な航空需要の拡大に伴うパイロット不足がある。国際民間航空機関(ICAO)によると、30年の世界のパイロット需要は10年の2倍超の98万人。特に需要の伸びるアジア・太平洋地域は23万人と、10年の4.5倍のパイロットが必要になる。

大手と違いLCCは低コスト運航が売り物だけに報酬も低く抑える傾向にある。有価証券報告書によると、パイロットの年収は全日空が約1900万円、日本航空が約1500万円。対してLCCは1200万~1500万円とされるだけに採用は容易ではない。

「うちの会社に来たら機長並みの待遇を保証する」。中堅航空会社のある副操縦士はLCCからこんな打診を受けた。最近では国内LCC3社の間でもパイロットの引き抜き合いが起きている。

■「飛行機通勤」も

どう人材を確保するか。各社も対策に動く。

バニラは7月以降、グループ会社の全日本空輸から10月末までの期間限定で2人の機長の出向を受け入れる。日本航空系のLCC、ジェットスター・ジャパンも副操縦士を機長に昇格させる育成制度を始めており、これまでに7人の機長を自社で養成した。

パイロットに「飛行機通勤」を認める事例も出始めた。関西が地盤で採用で不利だったピーチは昨秋の関空―成田線の就航をきっかけに飛行機通勤を導入。現在約100人いるパイロットのうち、1割強が首都圏から通勤するようになった。

ただ人材確保には限界があるのも事実だ。自社養成しようにも副操縦士として経験を積み、機長になるには早くても8年程度かかる。パイロット不足を恐れるあまり余剰な人員を抱えれば、効率的な経営で低運賃を実現するLCCのビジネスモデルも揺らぎかねない。

バニラの石井社長は「今後は就航率や定時出発率を高めることに注力する」と述べ、路線拡大よりも信頼回復を優先させる考えを示した。国内3社が就航した12年の「LCC元年」から3年目。各社の経営は早くも曲がり角を迎えている。(白石武志、飯山順、堀越正喜)

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