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クラウドファンディング、出資者の理解と共感がカギ

山田 剛良(日経NETWORK編集長)

インターネットで小口資金を募る「クラウドファンディング(CF)」。国内でもマニアックな製品やサービスの開発資金集めとして定着しつつある。今は数十万~数百万円の調達事例がほとんどだが、3000万円の調達に成功した例も出た。

携帯型コンロ「RSRストーブ」50台の製造資金は3時間余りで集まった

「こんなに支持されるとは予想しなかった」。東京・杉並に住むデザイナーの河野辺元康氏は今年1月にCFで自ら開発した携帯型コンロ「RSRストーブ」の試験製造の資金調達に成功した。

1台約9000円のコンロ40台分の製造資金をわずか3時間で調達。追加募集した10台分も10分で終了し、その後も追加予約の要望が殺到した。

RSRストーブはアルコールを燃料に使う小型のコンロだ。アルミ削り出しの美しいデザインと高い燃焼効率が売りで、アウトドアでお湯を沸かす用途に使う。もともと渓流釣りが趣味の河野辺氏が、市販品の燃焼性能やデザインに不満を抱いて開発を始めた。

RSRストーブを開発した河野辺氏

同好の士が集う交流サイト(SNS)などで開発の経過を報告。要望を吸い上げて設計改良を重ねて手応えは感じていたが、実際の反応は予想以上。初期ロット製造の資金に加え、量産時の見込み客やファンが多数得られた。河野辺氏は「目標だったアウトドアグッズのガレージメーカーを始められる」と意気込む。

「培った人脈をフル活用した感じ。もう二度と同じお願いはできない」。TSUMO・JP(東京・港)で男性化粧品の通販事業を手掛ける野口卓也氏は、男性向けエステサロンの開業資金の一部3000万円を4月にCFで調達した。

エステサロン開業は化粧品通販事業の知名度を高める戦略の一部。宣伝や見込み顧客の獲得を兼ね、あえて金額を高めに設定した。が、達成までの道のりは厳しかった。取引先や友人・知人をリストアップして野口氏が自ら行脚。100万円以上の大口支援は直接説得して獲得した。

やまだ・たけよし 東工大工卒、同大院修士課程修了。92年日経BP社に入社、「日経エレクトロニクス」など技術系専門誌の記者、日本経済新聞記者を経て13年から現職。京都府出身、48歳。

政府が法改正に動くなど国内のCFには追い風が吹いている。実際の商品やサービスが完成する前に予約販売する「購入型」であれば、商品を作る前に売り上げが立ち、資金面で有利となる。宣伝や見込み顧客の獲得にもつながるマーケティング面のメリットもある。

利用者はまだ世にない商品をいち早く入手できる「先物買い」の楽しみがある。一方、商品がいつまでも完成しないリスクも。先行する米国ではトラブルや訴訟も多い。

とはいえ、あまりリスクばかりを強調するのも考えものだ。プロジェクトの事前審査を強化する方向もあるが、玉石混交だから面白いCFの魅力を損なうなら本末転倒になりかねない。

「資金調達側の大義名分が最も大切」。映画のCFを手掛けるMotionGallery(モーションギャラリー、東京・中央)の大高健志社長は強調する。自主映画などは完成に至らないリスクが大きい。調達資金の用途や、なぜCFで調達するのかを誠実に説明し、理解と共感を得るのが成功の道という。

利用者=支援者という「CFの原則」の理解が進めば、万が一のトラブルは最小限にできる。利用者に理解を得やすい運用手法の確立が、普及の鍵を握る。

〔日経MJ2014年6月16日付〕

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