利用者300万越えも スマホニュース、覇権争奪戦へ
(徳力基彦)
スマートフォン(スマホ)向けニュースアプリの覇権争いが激しさを増している。スマートニュース(東京・渋谷)が2月、サービス開始からわずか14カ月で300万ダウンロードを突破したと発表。と思えば、3月にはライバルのGunosy(グノシー、東京・港)がウルトラマンを使ったインパクトのあるテレビCMを展開し始めた。

さらに、グライダーアソシエイツ(東京・港)のニュースアプリ「Antenna(アンテナ)」もタレントのローラを起用したテレビCMを開始。両社それぞれ300万件のダウンロードを達成したと報じられた。
これらの3つのサービスは、いずれも新興のベンチャー企業だ。開発したスマホ向けニュース閲覧アプリは、どれも基本的に無料だ。
ソーシャルゲームのようにテレビCMでユーザーを増やして課金で収益をあげるサービスに対して、無料で使えるニュースアプリのCMをベンチャー企業が大々的にテレビで展開している現状に違和感を感じている人も少なくないだろう。これは、まさに今この時こそがニュースアプリでスマホ利用者の最大シェアを握るための非常に重要なタイミングを迎えていることが背景にある。
300万ダウンロードという数字は会員制サイトなら十分な会員数といえる。だが、日本の人口やスマホ利用者の増加を考えると、当然まだまだ伸びしろがある。
ニュースアプリは利用者1人がいくつもを使い分けるケースは少ない。3社とも300万~400万人あたりでユーザー数を競い合っていても、最終的には1位と2位の間に大きな差がつく可能性が高い。パソコンでのインターネットの黎明(れいめい)期にも様々なポータルサイトが登場し覇権を争っていたが、日本では最終的にヤフーが勝利を収め、圧倒的なトップの地位を確立するに至っている。
スマホでは目的別にアプリを使い分けるのが一般的なため、ニュースアプリがネットポータルサイト同様にあらゆる入り口になれるかどうかは別問題。だが、利用者の情報収集の入り口として地位を確立できれば様々な可能性が見えてくる。

「ヤフー!ニュース」に取り上げられると非常に大きなインパクトを持っていたのと同様、スマホ向けニュースアプリに取り上げられることが重要になる未来が、すでに来ているのだ。
当然、この分野を狙うのは専業ベンチャーだけではない。PCでニュースサイト閲覧のトップであるヤフーや、今やスマホのコミュニケーションに欠かせないチャット・無料通話アプリを提供するLINE(東京・渋谷)も、自社で独自ニュースアプリの提供を始めた。各種ニュースを提供する新聞社などのコンテンツ供給側も、独自アプリの開発に余念がない。
おそらくは先行するニュースアプリを買収して出遅れ挽回を目指す企業も出てくるだろう。実際のニュースアプリで本当に重要なのは、ダウンロード数よりもむしろ継続利用者数であり、こちらを注視する必要がある。ニュースアプリを活用した広告メニューも増えてきており、企業担当者もこれらニュースアプリの動向は人ごとではない。
スマホではゲームばかりやっていて、ニュースアプリは見ていなかったという方は、ぜひ早めにいくつか試してみることをお勧めしたい。
(アジャイルメディア・ネットワーク取締役)
[日経MJ2014年6月13日付]