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中堅企業の競争力、アジアで躍動する製造業が上位

NEXT50ランキング

日経産業新聞と日本経済新聞デジタルメディアは売上高500億円までの中堅企業の競争力を測った「NEXT50上場中堅企業ランキング」をまとめた。首位に輝いた自動車工場向け大型プレス機のエイチアンドエフなどアジアの成長力を取り込んだ製造業の躍進が目立つ。独自の技術力、きめ細やかなサービスで新興国を攻める。

エイチアンドエフは海外市場向けの売上高比率が7割超(福井県の工場)

「英語は話せるように」。エイチアンドエフの宗田世一社長は社内で、こう繰り返す。海外市場向け売上高比率が7割超。主要な取引先の日系自動車大手の海外展開に対応する形で海外を開拓していたが、今や取引先は海外の大手に広がる。グローバル化が急務だ。

技術者すぐ派遣

福井県あわら市にあるエイチアンドエフの工場は活況だ。今年度中に台湾の自動車パネルメーカーの中国工場向けに1600トン級のプレス機5台で構成するラインを2本設ける。製造されるパネルは瀋陽にある独BMWの工場に納入される。大型受注への対応は始まっており、近く開始するプレス機の生産準備で製造現場は熱い夏を迎えている。

海外向け売り上げを伸ばす秘訣の一つがきめ細かなアフターサービス。英国、米国、タイなどの現地法人のほか、協力会社も合わせて世界8拠点を確保。それぞれのサービス拠点から納品先の工場に機械の保守を担う技術者を迅速に派遣できるようにしている。この信頼感が成長の糧になる。宗田社長は「社員を常駐させてコストをかけても、十分に採算は合う」と胸を張る。

明るさを測定するエンプラスグループの技術者(埼玉県川口市)

5位のエンプラスは精密プラスチック技術に強く、韓国サムスン電子などとの取引で成長する。2014年3月期の連結営業利益は123億円。前の期の2.7倍だ。

好業績を支えるのは液晶テレビのバックライト向け特殊レンズ部品。発光ダイオード(LED)の光を効率的に拡散させることが可能で、テレビメーカーはLEDの数を減らして生産コストを抑えることができる。

サムスンのパートナー

最初の納品先はシャープだったが、サムスン電子などの海外勢にも広げられたため、収益力に安定感が増した。酒井崇取締役専務執行役員は「海外の顧客は製品全体の生産コスト削減を目指すパートナーとして受け入れてくれた」と振り返る。

自動車やOA機器に組み込む歯車部品、半導体産業用の高機能樹脂部品などで培われた研究開発力と生産力が生命線。埼玉県川口市にある本社や研究所などで約200人の技術者が開発を担う。その技術を生かす生産力も強み。「1回の試作で精密な部品を製造できたとしても、量産となると難しい」(酒井取締役)。超精密金型を設計し、それを使って加工することで可能になる。

運営も任せる

中堅企業は大手企業と比べ、グローバル人材などの経営資源に乏しく、国際戦略は後手に回っている場合が多い。だが、エイチアンドエフやエンプラスのように、中国などのアジアの成長力を取り込めば、世界を舞台に飛躍は可能。もちろんリスクを低減するための工夫も不可欠だ。

6位に入ったマンション内装ドア製造のニホンフラッシュは中国の住宅市場を開拓して成長する。中国市場をめぐっては、日中の政治情勢を理由に撤退する企業も増えている。だが、ニホンフラッシュは高橋栄二社長が独自の人脈を持ち、中国ビジネスはぶれない。

きっかけは02年にさかのぼる。工場進出を検討していた高橋社長は当時上海に駐在中だった知人で、現在は台湾のデベロッパー大手、潤泰創新国際の董事長を務める簡滄圳氏に相談した。

「進出先は消費市場として有望な上海を中心とする華東地域がよい」。この助言を受け、高橋社長は決断。簡氏から現地に進出する行政の手続きなどでも支援してもらい、03年に新工場の稼働にこぎ着けた。高橋社長は「運営も現地の中国人に任せ、やる気を引き出している」と打ち明ける。

昨秋に中国で3カ所目となる江西省宜春市の工場も稼働。さらに6億~8億円を投資し、来秋には生産能力を倍増させる。15年3月期の中国売上高は前期比3割増の100億円に達し、連結売上高に占める比率は6割超になる見込み。これまでの沿岸部に加え、内陸部の顧客を開拓中。中国の成長力を取り込み業績を伸ばす戦略で攻めの姿勢を貫く。

速さ安さで中小開拓

アジアの成長力を背景に製造業が伸びれば、物流も活発になる。国際貨物輸送(フォワーダー)のエーアイテイーはその代表格だ。日中間のフォワーダー経由の海上輸送は業界トップ。シェアの大きさは船会社に対する価格交渉力に直結する。速くて安いサービスを実現しながら9期連続の増収増益を実現している。

日中間貿易に特化し、価格競争力を高めた(中国・蘇州の港)

「日中間の輸送需要はまだまだ伸び続ける。きめ細やかなサービスを生かして攻めの経営を続ける」。矢倉英一社長はこう強調する。日本通運や近鉄エクスプレスなど大手が手薄だった中小の取引先に営業担当者を配置、きめ細かなサービスで最適なプランが提案できる体制を整えている。

フォワーダーは利用運送業と言われる事業で、船舶や飛行機を利用した様々な貨物を国際輸送する。自社で輸送手段を持たない代わりに、顧客にサービスを提供する物流における旅行会社のような役割を担う。少ない資産で売り上げを伸ばし、「NEXT50」のランキングは使用総資本回転率の高スコアを背景にして15位に食い込んだ。

エーアイテイーは1988年に設立。業界内では後発だが、日中間の比較的小口の貨物をメーンターゲットにして、活路を見いだした。

独立系企業として業界初めてのサービスを矢継ぎ早に開始。荷物の積み下ろしなどの時間を短くするサービスを2001年に開始し、09年にさらに1日短縮するサービスも導入した。中国沿岸部の拠点は10カ所。中小企業にとって手間のかかる通関業務代行にも力を入れ、日中間のコンテナ船輸送量(20フィート換算)は約15万本とフォワーダー業界で1割強のシェアを持つにまで成長した。

成長路線を維持するには優秀な人材の確保が欠かせない。積極採用で今年2月末に78人の営業スタッフを早期に100人にしたい考えだ。過去1年間に取引がなかった新規顧客を毎年1千社程度開拓しており、矢倉社長は「営業マンの増加が輸送実績拡大につなげられる」とみている。

足元で輸送量がやや鈍っているが、15年2月期の連結売上高は前年同期比14%増の218億円、営業利益は同5%増の14億円を見込む。全売上高に占める日中間の貿易比率は約9割。日中貿易に経営資源を集中させる戦略を維持しつつ、成長を加速させるために「戦略的なM&A(合併・買収)も検討する」(矢倉社長)と公言しており、次の一手に注目が集まる。

(岡森章男、大西智也、徳島支局長 上原吉博、福井支局 西原幹喜)

[日経産業新聞2014年7月10日付]

 日経産業新聞では7月10日付から3回にわたって「NEXT50上場中堅企業ランキング」を連載します。
 調査の方法 上場企業のうち、2014年3月期を直近とする連結売上高(非連結企業は単独売上高)が500億円以下の中堅企業が対象。変則決算の企業と金融関連を除いた。
 ランキングの作成にあたっては、NEEDS(日本経済新聞デジタルメディアの総合経済データバンク)から、(1)売上高営業利益率(営業損益が黒字の企業のみ対象)(2)自己資本比率(3)営業利益増減率(3期前との比較)(4)使用総資本回転率――の4指標を使った。
 各指標をそれぞれ偏差値化し、その平均値を基に総合スコアを出した(4指標が全て有効値である企業だけが対象。最終赤字のあった企業は除いた)。
 今回の調査対象となったのは全体で3372社。うち、前記の条件に合致した783社を最終的に順位付けした。

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