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第一三共、失策続きの6年 印子会社を実質売却

第一三共が子会社でインド後発医薬品大手のランバクシー・ラボラトリーズの実質売却を決めた。伸びる後発薬展開の切り札として5千億円で買収してから6年。肝心の「虎の子」は品質問題の影響で本格的な親孝行を果たせないまま、インドの後発薬大手に吸収される。失策続きの6年にようやく終止符を打つ格好だが、成長の青写真は描けないままだ。

インドの後発薬子会社の実質売却について記者会見する第一三共の中山社長(7日午後、東京都中央区)

ランバクシーは同じ印後発薬大手、サン・ファーマシューティカル・インダストリーズに年末をめどに吸収合併される。ランバクシーに約63.4%出資する第一三共は株式交換の形で、サンの約9%の株主となる。合併会社はインド最大の製薬会社、後発薬で世界5位の大手となるものの、第一三共の経営への関与度は大きく下がる。

「買収で得たものは大きい。取り返せると思っている」。7日夕に開かれた記者会見。第一三共の中山譲治社長は「買収は失敗か」との質問に繰り返しこう述べた。

買収で後発薬のビジネスモデルや新興国で事業展開するノウハウを学べたというのが、同社の見解。だが中山社長の言葉とは裏腹に、買収後の株価急落による評価損や、インド工場の品質問題による米政府との和解金など、計上した損失額は計約4500億円に上る。

第一三共によるランバクシー買収は出だしからつまずいた。2008年6月の買収合意直後に主力2工場の品質問題が発覚。米食品医薬品局(FDA)から米国への製品輸出禁止措置を受けた。社内で買収へ反対論も出たが、結局押し切った。

それだけではない。第一三共は経営陣を送り込むなどランバクシーの品質問題に対処してきたが、「現場レベルまで行き届いた指導がなされなかった」(同社幹部)。改善策の徹底が遅れ、FDAの不信を募らせた。

「窓からハエが飛来している」「錠剤に異物が入っている」。現地ではランバクシーの工場の品質問題を巡る報道が続く。FDAは昨秋に後発薬を生産するモハリ工場、今年1月には原薬を生産するトアンサ工場にも禁輸措置を出した。最大の米市場への供給を絶たれ、ランバクシーはいよいよ窮地に陥った。

サンとの交渉が始まったのはこの頃だ。

社内抗争も勃発

「うちにやらせてもらえないか」。かねてランバクシーとの連携を探っていたサンのディリップ・サングビ社長が中山社長に合併を打診。追い詰められた第一三共とランバクシーにとって「渡りに船」の提案だった。

第一三共側が受け入れたのには別の事情もある。社内の勢力変化だ。

今回サンとの合併を主導したのは中山社長、財務担当の坂井学取締役、研究開発担当の広川和憲取締役の3人。いずれも第一製薬出身だ。ランバクシーの買収を主導した旧三共の庄田隆会長は外されていたという。

「ランバクシーは旧三共案件」が社内の共通認識。「買収を決めた当事者は何をやっているんだ」(旧第一OB)。社内外からは庄田会長の責任論も高まっていた。

05年に「対等の精神」で合併した第一三共だが、実態は旧第一と旧三共の勢力争いが続いている。今回の幕引きを主導したことで旧第一体制の色合いが濃くなったが、意思決定を速めるまで6年の歳月を無為にした。

迷走の末にランバクシーの実質売却に踏み切った第一三共。会見では今後も後発薬事業を強化する方針を強調した。

後発薬見直し

中山社長は「年末までに(約9%出資予定の)サンと事業提携に向けた具体的な内容を詰めたい」と説明。インドで電話会見を開いたサンのサングビ社長も「第一三共との提携関係は維持し、重要な株主として関係を深めたい」と述べた。

米調査会社IMSによると、世界の後発薬市場は12年の1990億ドルから、17年に3360億ドルに膨らむ見通し。先進国の医療費の抑制や新興国の需要増などが背景だ。

とはいえ特許や国の規制に守られ高い利益が見込める新薬ビジネスと違い、新薬の特許切れすれすれのタイミングで発売する後発薬は低コストの生産体制とスピードが成功のカギを握る。競合も多く、新体制で世界を攻略できるかは未知数だ。

FDAの禁輸措置の行方も予断を許さない。サンのサングビ社長は「新会社では法令順守を徹底する」と強調した。だが実はサン自身、3月に西部グジャラート州の工場がFDAから禁輸措置を受けており、品質管理の改善はなお不透明だ。

7日の東京株式市場で第一三共の株価は3%高の1813円で取引を終えた。「業績悪化リスクが後退した」(松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリスト)と、「止血策」にまずは好感した格好だ。

ただ新興国戦略の要を手放したことは、中長期の海外戦略を一から練り直せばならないことを意味する。製薬業界の競争環境が激変する中、いたずらに時を費やした第一三共。失った6年の痛手はあまりにも大きい。

(佐々木元樹、堀田隆文)

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