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検査機の放射線量8割減 フィリップスが医療革新

編集委員 大西康之

オランダの医療機器大手、ロイヤル・フィリップスが最先端の画像診断装置で攻勢をかけている。同社のヘルスケア部門が掲げるテーマは「Solution for better care at lower costs(低コストでより良いケア技術を)」。いたずらに先端技術を追うのではなく、患者に優しく、医療従事者にとって使いやすいイノベーションを目指している。画像診断装置の開発競争は新たなステージに入った。

フィリップスエレクトロニクス・ジャパンのインジェニュイティーTF・PET/CT

フィリップスエレクトロニクス・ジャパン(東京・港)は昨年11月、画像診断装置の新機種「インジェニュイティーTF・PET/CT」(価格は15億円から)を発売した。腫瘍組織の糖代謝レベルの上昇といった生体の機能情報を読み取る陽電子放射断層撮影装置(PET)と、臓器などの形態情報を見るコンピューター断層撮影装置(CT)の機能を1台に統合し、ずれがない組み合わせの画像を得られる。

日々の仕事を「間違えにくく」

画像ノイズの低減などで診断装置としての性能を引き上げたのはもちろんだが、同じ画質を得るために必要なCTの放射線照射量を最大で8割低減している。被曝(ひばく)量の低減は患者と検査医の負担を軽くする。使う側の視点に立った重要な革新といえる。

フィリップスが画像診断装置の開発で重要視しているのは、実際に装置を使う検査技師や画像を読み取る読影医師の日々の仕事を「疲れにくく」「間違えにくく」するための改良だ。そのためには検査時の被曝量を低減したり、装置の性能向上やワークフローの改善で検査時間を短縮したりすることが大切になる。インジェニュイティーTF・PET/CTはこうした部分できめ細かい改善がなされている。

「iサイトPACS」と呼ぶ病院向けの情報共有システムには、読影医師の目の負担を軽くするため読影室の調光に発光ダイオード(LED)照明を採用した。画像をパワーポイントに張り付け、検査医師や診断医師と画像情報を共有することもできる。同システムには、医療現場からのリクエストにこたえ、読影医師が検査医師や診断医師とリアルタイムで対話できるチャット機能も付けた。

米ゼネラル・エレクトリック(GE)、独シーメンスと並んで画像診断装置の世界ビッグスリーを構成するオランダのフィリップスにとって、日本は北米、中国に次ぐ世界3番目の市場。新機種の開発にも、日本の医師の意見を積極的に取り入れている。診断画像の画質についても、日本の医師と海外の医師では好みが異なるため、日本で販売する機種の画像は日本向けに調整してある。

アフターサービスの質向上

2014国際医用画像総合展で経営方針を説明するフィリップスエレクトロニクス・ジャパンのダニー・リスバーグ社長(4月11日、パシフィコ横浜)

フィリップスエレクトロニクス・ジャパンのダニー・リスバーグ社長は、日本市場開拓の鍵が「アフターサービスの質にある」とみている。最新の画像診断装置を日々の診断で使いこなすのは、ベテラン医師にとっても、容易なことではない。「お医者様をサポートするサービス要員の力量が重要」(リスバーグ社長)という。日本では画像診断装置を使う検査技師のサポートに50人、睡眠検査技師のサポートに60人以上を張り付けている。

「技術だけでは意味がない。我々が目指すのは患者さんや医師にとって意義のあるイノベーションだ。検査をより安全に、簡単にできれば、ひいては医療コストの引き下げにもつながる」(リスバーグ社長)

フィリップスは2013年、「イノベーション・アンド・ユー」という新たなブランドラインを導入した。フランス・ファン・ホーテン最高経営責任者(CEO)は、「イノベーションはフィリップスのDNAに組み込まれているが、我々はイノベーションによって、より手ごろで利用しやすいヘルスケアを実現する」と語っている。

画像診断装置などの進化は医療を飛躍的に進歩させたが、それを使う医師の負担は重くなっている。検査に時間がかかれば患者の負担も増す。検査、読影、診断、執刀、術後ケアと医療現場の分業が進むにつれ、医師間の情報共有も難しくなってきた。患者や患者の家族に病状を分かりやすく説明するニーズも高まっている。診断装置メーカーはこうした装置の性能を上げるだけでなく、こうした医療現場の複雑なニーズに対応することを求められている。

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