来れ、世界に挑む若者よ 広がる海外研修の選択肢
校條 浩(ネットサービス・ベンチャーズ マネージング・パートナー)

2014/5/18 7:00
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私がインキュベーション(起業支援)した会社のひとつは、ベンチャー情報のデータベースを提供している。中核スタッフであるアナリストには、技術やビジネスへの深い理解と分析スキルが求められる。そのアナリストの一員に、2年前からインターンを採用している。

■短期間で見事に成長

インターンと言っても、毎月の給料は支払い、仕事の内容も他の社員と同等。違いは週に何日か大学の講義に出席するくらいだ。彼らは短期間のうちに見事に成長して、正社員として採用したいくらい会社に貢献してくれている。

めんじょう・ひろし 小西六写真工業で新事業開発に従事。BCGを経て1991年にシリコンバレーに移住。米ベンチャー企業への投資と日本企業へのコンサルティングを手掛ける。2002年より現職。

めんじょう・ひろし 小西六写真工業で新事業開発に従事。BCGを経て1991年にシリコンバレーに移住。米ベンチャー企業への投資と日本企業へのコンサルティングを手掛ける。2002年より現職。

彼らはシンガポール国立大学(NUS)の学生だ。年2回、10~20人ほどの大学生が休学してシリコンバレーにやってくる。1年間、スタンフォード大学の授業をいくつか受けながら、こちらのベンチャー企業で働く。NUSのシリコンバレー事務所が、米国でのビザ取得、インターン先の企業の発掘や紹介、大学との連携などの業務を担い、授業料などの費用はNUSが持つ。渡航や住居探しなどは自己責任だ。学生はシンガポールで授業の合間にいろいろなパートタイムの仕事をしてきた人が多く、実践力も仕事に対する心構えもある。

NUSのインターンを採用したある日系のベンチャーキャピタリスト(VC)はこう語っている。「シンガポールでトップクラスの人材なので、理解力と馬力がすごい。英語はネイティブだし、タフでハングリー精神が旺盛だ。ここでもすぐにコミュニティーに溶け込んでしまう。生き馬の目を抜くシリコンバレーで私のような新しいVCが生き残る上で、残念ながら日本からの人材は今のところ採用できない」

シリコンバレーで何かとハンディが多い日本人だが、基本能力が低いわけではない。先日、日本のネット系企業に採用されてシリコンバレーに赴任した若い女性と話す機会があった。ソフトウエア開発技術を競う米国の大会で全国優勝したという。技術の世界では世界に勝負できる人材が日本から輩出している。足りないのは、シリコンバレーで経験を積む機会だ。

■人材育成の出島になる

シリコンバレーでの短期教育プログラムは、実は日本人の手でも行われている。九州大学、鹿児島大学、慶応大学などは毎年学生をシリコンバレーに送りこみ、1カ月ほど日系企業で研修させている。「人生やキャリアに対する考えが変わった」という学生が多くいるそうだ。

大阪市ではシリコンバレー人材派遣プログラムを去年から実施している。シリコンバレー滞在はたったの1週間ではあるが、事業アイデアをシリコンバレーで磨きをかけ、現地人の前で英語で発表させるところが特徴だ。英語での発表を最後までやりきることは、参加者が殻を破り、挑戦することへの勇気を身につけることになる。このプログラムがきっかけで、勤めていた企業を退職して起業した人も現れている。

このように短期間の研修には意義があるが、グローバルで通用するリーダーの育成のためには、NUSのような長期的なインターン制度も必要だ。その目的で、来年から新たなプログラムがスタートする。シリコンバレーの中枢にあるサンタクララ大学の経営学部が主体となり、スタンフォード大学とも協力しながら日本のグローバル人材を育てる新プログラムだ。

参加者は、1年の間に起業やイノベーションに主眼を置いたビジネス分野での修士号取得を目指し、並行してシリコンバレーの現地企業でのインターンも務める。「日本人総起業家」運動を提唱する山本一太科学技術担当大臣も賛同され、全面的に協力をいただくことになっている。シリコンバレーが人材育成の出島となる。

[日経産業新聞2014年5月13日付]

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