/

優れた省エネに減税 脱電力使用促す仕組み探れ

日本総合研究所理事 足達 英一郎

4月11日、新しいエネルギー基本計画が閣議決定された。この計画はエネルギー政策基本法の規定にしたがって、エネルギー需給に関する施策の長期的、総合的、計画的な推進を図るために、ほぼ3年に1回の頻度で見直される。

分かりにくさ目立つ新エネ計画

ただ今回の計画見直しは難産だった。前回の計画で2030年に向けた目標として(1)エネルギー自給率及び化石燃料の自主開発比率を倍増、自主エネルギー比率を38%から70%程度まで向上(2)ゼロ・エミッション電源比率を34%から約70%に引き上げ――を掲げていたのだが、東京電力福島第1原子力発電所事故で、修正を余儀なくされたからだ。

前提となる政策形成や合意が困難な現状から、数値的な目標がほとんど盛り込まれなかった。原発については「依存度を可能な限り低減する」という文言がある一方で「安全性の確保を大前提に、エネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源」と位置付けるなど分かりにくさも目立った。

公表されると海外からは「いったい、何が方向性として示されたのか」という問い合わせが相次いだ。言い換えれば、原発依存度低減を支持する世論と、化石燃料の使用増加に伴う温暖化ガスの排出、安全保障上の脅威、電力価格上昇、経常収支の悪化などの懸念事項とのはざまで「決められない政治」を続けざるを得なかったといえる。

では、本当に示すべき方向性はなかったのか。残念なのは「徹底した省エネルギー社会の実現」という視点が掲げられながら「総需要抑制」という観点が、前面に出てこなかったことだ。計画ではピーク対策の効果や技術革新の可能性に触れた後「供給量だけでなく需要量を管理することを含め(中略)多様な選択肢が需要家に対して示される環境が整っていくことになる」という程度の記述があるにすぎない。

省エネ達成度を顧客に通知

これに対し米国の多くのエネルギー供給事業者は顧客の省エネ量を担保する義務を負う。背景には、例えば電力販売量が増えれば新規の発電所を造ったり、送配電設備を増強するコストがかかって電気料金が上がったりするので、これを回避したい考えがある。

ユニークなベンチャー企業も成長している。07年設立でバージニア州に本拠を置くオーパワーは、各家庭の電力使用のデータなどを収集し、いくつもの世帯類型を置いて、同一類型に属する顧客に省エネ達成度を通知するサービスを、電力会社と連携して提供している。いわば、よく似たご近所さんを引き合いに、省エネ努力が不十分なライフスタイルが、電力会社が配信する省エネリポートであぶり出される仕組みだ。こうしたサービスで、利用者全体で平均1.5~3%の節電効果があるという。

この延長線上には、家庭や企業が平均よりも優れた省エネを達成した場合に、税負担を軽減するなどの施策が考えられる。趨勢を常に公表することで、継続的な省エネ努力が生まれ、エネルギーを使わない生活や事業への転換が、おのずと促されよう。

需要に応じて電力が供給される時代は終わったと考えたい。事実、11年度以降の電力使用量の減少は、供給制限に呼応した需要家側の忍従ではなく、脱電力使用への積極的な選択と捉えることもできるのではないか。そうした需要家の選択を後押しする知恵を集め、政策の中核に据えることに力を注ぎたい。

[日経産業新聞2014年5月8日付]

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連企業・業界

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン