/

社会基盤の「標準」奪取せよ IT列強つばぜり合い

(三淵啓自)

6月25日に米グーグルがサンフランシスコで開いた「グーグルI/O」。スマートフォン(スマホ)向け基本ソフト(OS)「アンドロイド」を基軸にした開発プラットフォームの拡張ぶりが話題となった。

ウエアラブル機器向けの「アンドロイド・ウエア」や車載用「アンドロイド・オート」が発表された。特に「オート」は自動車メーカーなど25社が車両などへの採用を決め、年内に最初のモデルが発売されるという。

クラウド上にデータを置き、同一のプラットフォームでモバイル、家電、自動車、交通網、都市などで、場所やサーバーなどに左右されず、あらゆる端末でシームレス(無境界)に情報を扱う社会。グーグルの発表は、その社会の基盤となるOSの覇権争いが本格化したことを意味する。

グーグルに対抗する米アップルは「カープレイ」という車載用のiOSの開発を進めている。イタリアのフェラーリ、ホンダ、現代自などが搭載するとのリリースが3月にあったばかりだ。アップルとグーグルの市場獲得競争が激化すれば、車を買うにも自分が持っているスマホに影響される時代がやってきそうだ。

スマホを使う個人の空間や自宅、そして車内。これらは極めてプライベートな空間だ。そこで優位性を高めたOSは、公共の場やオフィス空間、都市でのプラットフォームとなるOSを巡る競争にも影響していく。

もっとも、現状ではオフィスや学校、公共空間などでウエアラブル機器を使おうとの機運が高まっている。それを実現する技術も進化し、導入コストも低下しつつある。そこでグーグルは「グーグル・アット・ワーク」というオフィスや公共の場で眼鏡型のウエアラブル端末「グーグルグラス」を活用する推奨プログラムを提供し始めた。

日本でもセイコーエプソンが先月19日、ウエアラブル事業の戦略説明会を開き、透過型ディスプレーを装備したスマートグラス(眼鏡型端末)「MOVERIO(モベリオ)BT-200」や、リストバンド型端末「パルセンス」などを紹介した。端末を利用したい企業へ供給する「ビジネス・トゥ・ビジネス(B2B)」を中心に、事業規模を5年以内に100億円にするという。

個人が使うパーソナルなウエアラブル端末は、各人の生活習慣やファッションといった文化的な影響を受けるため、生活していく中での必然性や利便性が高くないと普及には時間がかかる。好き嫌いに個人差もあり、日常生活で頻繁に利用されるにはかなり高いハードルを越えねばならない。

そこでアプリやコンテンツ、サービスなどの多様な利用方法を考えてもらおうと、デバイスの仕様や開発キットを公開し、誰もがアプリなどを開発・提供できるようにする傾向が強まっている。ただ、これは「もろ刃の剣」の側面もあり、誰もが開発できるとなれば競合企業やベンチャーが参入して競争は激化する。

6月2日に開かれたアップルの開発者会議では新製品のスマートウオッチ「iWatch」などの発表が期待されたが、結局は空振りだった。年末には登場するとの噂もあるが、同社は多様性の求められるウエアラブルを自社開発するのはリスクが高いと判断した可能性もある。故スティーブ・ジョブズのように革命的な端末を世に送り出すには大変な労力とリスクを伴う。巨大化したアップルには少し荷が重くなったのかもしれない。

今後はグーグル、アップルに次ぐウエアラブル市場の第3勢力として、日本発の「TRON(トロン)」のようなリアルタイム処理が得意なOSが台頭してくると、さらに多様化して面白いイノベーションを起こるのではと考えている。

(デジタルハリウッド大学教授)

[日経MJ2014年7月4日付]

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連企業・業界

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン