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「あったらいいな」極める 技能より発想力で勝負

スタートアップスinUSA(5)

 時流に乗った新しいビジネスの場をつくってきたのは、特異な技能よりも発想力だ。見知らぬ人と物やサービスを共有するシェアや、埋もれていたニーズを引き合わせるマッチング――。「あったらいいな」のアイデアが既存の需要の隙間をこじ開ける。
ブレーンストーミングはガラス扉がボード代わり(アーツィーのオフィス)

美術界の「アマゾン」目指す

「大学の寮の部屋に絵を飾りたかったのに、ネットで見つからなかったんだよね」。アートビジネスに新風を巻き込んだギャラリー仲介サイト、アーツィー。最高経営責任者(CEO)、カーター・クリーブランド(27)は自分のニーズを商機に変えた。

目指すのは美術界の「アマゾン」だ。2万5千人超の作家のデータベースをそろえ、アルゴリズムを使ってある美術品を好むユーザーがほかにどんなものを望むかを関連づけて薦める。提携しているギャラリーから月約4万~14万円を得る収益モデルだ。

ニューヨークの摩天楼を見下ろすオフィスにはキッチンや卓球台。センスと遊び心に溢れる。フェイスブックを生んだ投資家、ペイパル創業者のピーター・シールらから1400万ドル(約14億5000万円)の資金を調達し、約70人を雇用するまで成長した。

だが、起業当初は「月の食費は20ドル。その頃食べ過ぎた卵の白身は匂いもかぎたくない」と苦笑する。2008年の米金融危機。リーマン・ブラザーズに勤めていた母は一夜にして失職した。「仕事は情熱との両立を」。一家に重い空気が流れるなか、両親が起業を勧めてくれた。

08年以降、米国で失われた雇用は880万人。名門大でもほとんどの卒業生が職に就けなかった。逆境をバネに、難局をアイデアに変えた。

3カ月間みっちり起業教育

米ビジネス情報誌が3月に発表した「シリコンバレーで最も格好いい(クールな)人物ベスト100」に、フェイスブック創業者のザッカーバーグらに交じって選ばれた日本人がいる。新興企業向けの福利厚生サービスというニッチ市場を開拓したエニーパーク(サンフランシスコ)の創業者、福山太郎(26)だ。

新興企業向け福利厚生サービスで起業した福山太郎氏

「君たちは最悪のスタートアップだ」。福山は、クラウドサービス、ドロップボックスなどを育てた著名な投資機関、Yコンビネーターに"入門"したが、アイデアは次々と却下された。「正直逃げ出したくなりました」(福山)。Yコンビネーターは1社当たり2万ドルの少額投資だが、その代わりに3カ月間みっちりと起業教育をする。七転八倒して思いついたのが福利厚生サービスだった。

顧客は大企業のように社員への福利厚生制度が整っていない企業だ。エニーパークは顧客企業から月会費などを取り、稼働率を維持したいレストランやホテルに営業をかけ、割引券や宿泊券を集めてくる。

1日数百通の営業メールを送って顧客を獲得。急成長するスタートアップ企業にも好評で、セールスフォースやグルーポンなど今や3000社以上が顧客リストに並ぶ。

高級腕時計、2カ月ごとに交換

高級腕時計のレンタル会社を立ち上げたランディ・ブランドフ氏

景気の回復を象徴する明るいビジネスも出てきた。高級腕時計の会員制レンタルを始めたイレブン・ジェームズ(ニューヨーク)。映画「007」では主人公ジェームズ・ボンドがスパイ腕時計を11種類から選ぶのにちなんだ社名だ。

月額249ドルで100万円以上の高級腕時計が借りられ、2カ月ごとに交換できる。13年11月、米国限定でサービスを始めたところ、オトコ心をわしづかみ。40カ国から事業展開の打診を受ける大反響ぶりをみせる。

創業者のランディ・ブランドフ(37)は会員向け自家用ジェット機サービス、米ネットジェッツの元幹部。自家用ジェットのシェア市場を生み出した。次は高級時計で新たな市場を生み出すつもりだ。

時代のプラットフォームを生むのは、いつの日も創意工夫だ。

=敬称略

スタートアップ第3の波、投資家の見方は

 スタートアップの第3の波を投資家たちはどうみているのか。ベンチャーキャピタル(VC)、ゼネラル・カタリスト・パートナーズのニューヨーク投資チーム、スペンサー・レーザー(29)氏に聞いた。
米ゼネラル・カタリスト・パートナーズのスペンサー・レーザー氏

――最近はどんな事業分野が伸びていますか。

「ネットとリアルをつなぐ分野が急成長している。理由はスマートフォン(スマホ)の普及。常時ネットを使える環境が新規市場をつくり、タクシー配車などの新サービスが誕生している」

――投資先としての注目分野はありますか。

「個人的に注目するのが労働市場だ。親の世代は同じ企業に四半世紀勤めるのが常識だったが、大きく変わった。今後はセラピーや弁護士、翻訳業務、家事代行サービスなどのマッチングが伸びそう。"フリーランサー・エコノミー"が新しく誕生するだろう」

――米国は多くの起業家を輩出してきました。

「技術の進展で起業のハードルは確かに下がった。だが、成功する割合は2~3%だろうか。私も昔、起業して失敗した経験者だ。だが米国では失敗した創業者のニーズが実は高く、経験自体が評価される。失敗しても他のスタートアップや大企業、VCなど様々な行き先があるのがいいところだ」

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