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オバマ氏も「自分撮り」 米エンタメ市場に変革の波

藤村 厚夫(スマートニュース執行役員)

米国の政治家や俳優、モデルらセレブリティーたちが、このところ「自分撮り」にハマッている。自分や仲間とのショットをソーシャルメディアで見せびらかす流れが定着し、「セルフィー(Selfie)」なる自分撮りを意味する新スラングも生まれた。

 ふじむら・あつお 法政大経卒。アスキー系雑誌の編集長、外資系IT(情報技術)企業のマーケティング責任者を経て2000年にネットベンチャーを創業、その後の合併でアイティメディア会長。13年から現職。東京都出身、60歳。

セルフィーの浸透ぶりを示す好例がオバマ米大統領だろう。2013年12月、故マンデラ南アフリカ元大統領の葬儀で、「オバマ氏、英国首相らと自分撮り楽しむ」と報道された。政界セレブたちがスマートフォン(スマホ)で記念撮影する光景は、TPOをわきまえていないと批判された。だが、それだけ日常化している証左なのだろう。

自分撮り文化では日本や韓国に出遅れた米国だが、マーケティングやビジネスにしっかり育てているのはさすがだ。例えば宝飾品や化粧品など高級ブランドのキャンペーン。フェイスブック、ツイッター、インスタグラムなどでセレブらの自分撮りを広告キャンペーンに使う例が昨年から急増している。

広告にはコメントや「いいね!」が多く寄せられ、ユーザーの反応が著しく高いことがブランド側を引きつける。プロの手になる完成度の高い作品を売り込むより、むしろ生っぽい写真や表情ゆえに消費者の好感や興味を集める。

自分撮りのトレンドはさらに加速、現在のけん引の主役はVine(ヴァイン)やインスタグラムなどのショートムービー(短尺動画)アプリだ。スマホからソーシャルメディアに投稿するのを目的にした写真アプリの動画版。静止画の写真アプリとして人気のインスタグラムも最近はショートムービー機能を備えた。

 ヴァインは撮影可能時間が6秒、インスタグラムは15秒と短く、「動画版ツイッター」とも言われる。投稿される動画の多くは稚拙だが、あまたの凡作から鑑賞に値する「珠玉の作品」が転がり出てくるのも、ソーシャルメディアが登場してからの定石だ。

GoPro(ゴープロ)を駆使して撮影された動画は日々、新作がアップロードされている(GoPro日本語版サイト)

背景にあるのは「自分自身がメディアである」という構造的な変化だ。ニュースは特別な場所や何かではなく、自分自身にもある――。「自分にも他人の興味の対象となる要素がある」という自己肯定感の産物だ。

アクションカメラに分類される小型デジタルカメラ「GoPro(ゴープロ)」。サーフィンやダイビング、スキーなど激しいアクションをともなうアウトドア系スポーツを誰もが気軽に撮影できるように設計された安価でシンプルな動画カメラだ。開発企業のGoProは近く米国で株式公開するという。

注目すべきはハードでない。同社のウェブサイトにはGoProで自分撮りしたアスリートらの動画が豊富にアップロードされる。米経済記事は「GoProの上場価値はカメラよりも動画メディア帝国を創り上げる可能性にある」と指摘。安価なアクションカメラのベンチャーは、いまや手に汗握るスポーツ動画を豊富に生み出すメディア企業に変貌する可能性を見込まれている。

1枚の写真から短尺の動画へ。注目されうる自分撮りへの欲求がもたらした構造の変化は、新たなビジネスの流れを創り出し、これまで大手メディア企業が独占してきたエンターテインメント市場を大きく塗り替える可能性すら秘める。

 急テンポで進化するウェブ世界のトレンドから将来への影響を読み解きます。藤村氏のほか放送作家で戦略PRコンサルタントの野呂エイシロウ氏、「日経NETWORK」編集長の山田剛良氏、フリージャーナリストの瀧口範子氏の4人が持ち回りで担当します。
[日経MJ2014年4月7日付]

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