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婚活男女を後押し? 人気広がる格安結婚式

招待客に結婚を承認してもらう「人前式」を選ぶカップルが増えてきた(楽婚と提携するレストラン、東京・渋谷のザ・レギャン・トーキョー)

従来より低料金の結婚披露宴サービスが増えている。「結婚したいけれどお金がない」というカップルに人気が出始めたほか、煮え切らない草食系の彼氏の背中を押す策として結婚サービス業界も売り込んでいる。昨今では婚姻届を出しても結婚式や披露宴を省略する人が増えており、価格の敷居を低くして新規顧客層を開拓できるか注目を集めている。

これまでの半額、支払いはご祝儀で

「通常の結婚式だったら費用が2倍はかかっていた」。今月、低価格の結婚披露宴プラン「楽婚」を利用したある新郎(27)は感慨深げだった。東京の渋谷・青山を一望できる屋上レストランを貸し切り、40人を招待して150万円程度で収まった。フラワーシャワーなどの派手な演出はないが、新郎新婦と親族が談笑できる時間を重視。テラスで親族の子供たちと新婚カップルがはしゃぐ姿もあり、自由な雰囲気で宴が進行した。

低価格の披露宴事業で台頭してきたのが「楽婚」と「スマ婚」という名称のサービスだ。それぞれ披露宴にかかる総費用を従来の約半分の150万~200万円程度に抑え、披露宴当日の支払いも可能とした。事前に払う頭金は楽婚が19万8千円、スマ婚が16万8千円で、残りの費用は招待客から当日もらうご祝儀で支払える。

楽婚はゲストハウスと呼ぶ邸宅風の結婚式場を運営するベストブライダルが新規事業として昨年6月に開始。スマ婚は結婚式2次会の幹事代行サービスを手掛けていたメイション(東京・新宿)が2009年に立ち上げた。当初は大阪だけだったスマ婚は東京と名古屋に進出し、10年度の成約は3476件にのぼったという。

内容絞り込んで安く

両社が価格を下げられた一因は、披露宴の内容を簡素にしパッケージ化したことだ。たとえば、牧師やオルガン演奏など何かと費用のかかるチャペルの結婚式の代わりに、披露宴で招待客を前に愛を誓う「人前式」にした。装飾用の花は最小限にとどめ、ドレスやタキシードを着替える「お色直し」を希望する場合はオプションとした。

独立系ウエディング・プランナーの岡村奈奈さんは「披露宴費用はもともと青天井。ご祝儀の1人あたり平均3万円で賄いきれない内容をどこまで求めるかはカップル次第」と説明する。招待客1人にかかる料理代や引き出物代などは2万円強で収まることが多い。残り1万円弱は会場使用料など固定費を人数割りした代金に充当。きらびやかな衣装やキャンドルサービスなど演出をどこまで盛り込むかが個人差となり、通常ならこの部分が合計で50万~100万円する。楽婚やスマ婚はこれを20万円以下に収め、演出を限定したサービスといえる。

ご祝儀がいくらになるか見通しにくいカップルのために披露宴の会費制を勧める場合もある。セントマリーチャーチ(東京・葛飾)は衣装と写真撮影を含む挙式費用を18万9000円とし、披露宴は招待客1人6000円からのプランを用意。ご祝儀をもらわずに会費制で低価格にすることで敷居を下げている。同チャーチは地域住民が出資しあって冠婚葬祭費用を拠出する互助会が母体だが、現在は会員以外でも利用可能とした。

会場側の危機意識を味方に

結婚をとりまく環境変化も見逃せない。厚生労働省の人口動態統計によると、婚姻件数は連動性の高い出生数とともに減少。第2次ベビーブームだった1972年と比べ、2010年の婚姻件数は36%減の70万6000件に縮小した。しかも婚姻件数は役所に婚姻届を出した件数なので、挙式や披露宴を開くカップル数はさらに限定される。20~30年前なら婚姻数の7~8割が披露宴を催したといわれるが、近年では5~6割に低下したとみられている。

一方、結婚式場やホテルは新設が続いて需給が緩和。稼働率を引き上げるため、会場が空いている日に楽婚などの低価格プランを受け入れている面もある。本来なら高額な挙式・披露宴プランで使わせた方が会場側の収益は大きいが、空室にしておくのはもったいない。料理メニューを特別仕様にするなど、採算を勘案しながら対応しているようだ。

結婚式費用は二極化へ

これらの低価格の結婚披露宴は「金銭面で結婚をためらっていた層を後押しするプラン。もともと結婚式に意欲的なカップル向けの事業とは住み分けができている」(ベストブライダルの宮田宏之・首都圏地区統括総支配人)という。

リクルートが運営するブライダル総研(東京・千代田)の鈴木直樹所長は「披露宴にこだわる新郎新婦は料理や演出でもてなす傾向が強まり、デフレ下でも単価は上昇した」と語る。同社が発行する結婚情報誌「ゼクシィ」の読者アンケート調査では挙式・披露宴の平均総額は10年が325万7千円と05年比で11%増加した。大規模な洋館風のゲストハウスを利用する比率が伸び、会場や演出への支出が増えたようだ。

一方で、最近は子供ができてから入籍するカップルも増えている。その場合、結婚式を開くには妊娠判明から出産までの短期間で準備が必要。出産と産後の諸費用も考慮して挙式・披露宴をあきらめるケースもある。パッケージ化による低価格と打ち合わせ回数の短縮をうたう楽婚やスマ婚は、こうした潜在需要の取り込みも図っている。

「時間と資金に余裕があるカップルの挙式費用は高止まりする一方、二の足を踏んでいた層が低価格披露宴を選ぶ可能性は広がっている」(ウエディング・プランナーの岡村氏)。今後、披露宴の価格帯は二極化が進みそうだ。

(商品部 小太刀久雄)

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