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冷暖房費が減る 人気のエコガラスの実力

内窓として取り付けるエコガラス(LIXILの都内のショールーム)

電力不足が懸念される夏場を前に節電効果の大きいエアコンや扇風機に注目が集まる中、省エネ効果をさらに高める「窓」が相次いで登場している。大手ガラスメーカーやサッシメーカーは断熱性や遮熱性を持たせた「エコガラス」の開発、販売に力を入れる。新築一戸建ての場合は普及率が9割以上とほぼ「標準装備」になったが、既存の住宅やマンションにエコガラスや複層ガラスを取り付ける例が増えている。内窓の工事費用の相場は通常のガラス交換に比べて2倍強の13万円前後(2メートル×1.7メートルの窓の場合)と高額だが、長期的な光熱費削減や住み心地の良さが評価されつつある。

4分の1の時間で冷房が効く

「エコガラスの内窓を取り付けてから、冷暖房を使う機会が減った」と語るのは、東京都墨田区の手塚昭(73)さん、静子さん(70)夫妻。昨年春、4LDKのマンションの7つの窓をすべて工事し、既存の窓の内側に「Low-E(ロウ・イー)」と呼ばれる断熱ガラスを用いた二層構造の窓を取り付けた。

この窓は二重ガラスの隙間に、熱を伝えにくいアルゴンガスを充てんしている。内窓と既存窓との間にできた約7センチの空気層にも断熱効果がある。「結露がほとんどなくなり、掃除の苦労やカビの心配がなくなった」という。

ガラス表面は特殊な金属膜で覆われており、夏場には遮熱効果もある。施工費は材料費込みで計約69万円。工事は1日で終わり、国の住宅版エコポイント10万2000ポイントと墨田区からの助成金11万3000円を受け取った。

旭硝子によると、一般の1枚ガラスでは太陽光の熱のうち89%を室内に通すが、同社のLow-E製品「ペアプラス」では半分以下の43%に抑えられる。実験では冷房をつけてから快適に感じるまでの時間は平均で従来の4分の1程度に短縮した。

冷暖房費が4万3000円減

サッシ(窓枠)は直射日光が当たる外側にアルミ、内側にポリ塩化ビニールなどの樹脂を採用するものが多く、冬場は屋内の熱を閉じ込める断熱性を発揮。年間の冷暖房費は標準的な一戸建て住宅(床面積148平方メートル=約45坪を想定)で、35%に相当する4万3000円を節約できる試算という。

防音効果もある。屋外で発生する音を平均で40デシベル低減する。例えば工事現場や走行中の地下鉄に匹敵する90~100デシベルの騒音なら、室内では50~60デシベルまで低減され、一般的なオフィス内やレストランに相当する水準になるという。

LIXIL(旧トステム)の内窓「インプラス」は2010年度の販売額が101億円と前年度比3倍強に伸びた。東日本大震災が発生した3月以降に住宅リフォーム市場は一時縮小したが、余震の減少や部材供給の再開で徐々に回復している。購買層はマイホーム購入から10~20年がたった50歳代以上が主力だが、節電志向を背景に30~40歳代がショールームを訪れる回数も増えている。

エコポイントや自治体補助金が後押し

窓の断熱工事への地方自治体の主な補助制度
自治体制度名補助内容の概要
(例外もある)
山形県山形の家づくり利子補給(県産木材使用の新築)省エネ・耐久基準など満たせばローン補助
東京都
品川区
住宅リフォーム助成事業断熱工事費用の1割、個人は上限20万円
東京都
墨田区
地球温暖化防止設備導入助成制度工事費用の2割、規模によって上限が異なる
東京都
千代田区
新エネルギー及び省エネルギー機器等導入助成制度断熱改修費用の2割、上限100万円
静岡市静岡市たてものまるごと省エネ化促進事業補助金制度複層ガラス1枚あたり1万5000円
福井県省エネリフォーム促進事業対象工事費用の1割、上限10万円
広島市住宅環境性能向上補助金(新築)1居室すべての窓の複層工事で5万円
山口県やまぐちエコハウス補助金太陽光発電と併せた工事で補助
福岡市住宅省エネ改修助成事業国のエコポイントの3分の2相当、7月終了
長崎県一般住宅省エネ設備導入支援事業工事次第、国のエコポイントとの併願不可

(注)自治体により細かい審査規定、新築の適用除外がある。予算消化により早期終了する場合もある

消費者の背中を押しているのは住宅版エコポイントだ。国土交通省は省エネにつながる設備に付与する同制度の終了時期を当初予定より5カ月早い7月末までに短縮すると発表。ガラス専門店では駆け込み需要が発生した。リグラスショップ・ウチヤマ(東京・墨田)の5月中旬から1カ月の受注件数は通常の倍の10件。内窓の改修工事が多いという。

国のエコポイントの終了後は、地方自治体が実施している補助金に注目が集まりそうだ。東京都品川区は8月以降の工事を対象に支援。窓の断熱化など省エネ関連の工事費用の10%相当額を個人で最大20万円、共同住宅で最大100万円補助する。静岡市や広島市も省エネ関連工事への補助制度を設けている。ただ、自治体によって審査基準が厳しいケースや、予算の早期消化で終了を前倒しすることがあるので、申請前に確認が必要だ。

重視する季節で変わる選択肢

実際に窓を購入する際は、地域による気候などの違いも商品選びのポイントになる。まず、冬の保温や結露防止を優先するか、夏の暑さ対策を重視するかの判断が重要だ。室内を保温するなら内窓が有効だが、暑さの厳しい地域では夏に熱がこもる可能性がある。また、暑さをしのぐには単なる複層ガラスへの交換では効果が限定的で、Low-Eなど遮熱性の高い商品が必要になるかもしれない。

都市部では防災上の理由で網状のワイヤ入りの窓が義務付けられている場合もある。単価の高いワイヤ入りエコガラスにするか、既存のワイヤ入り窓に通常のエコガラスを内窓として取り付けるかも選択肢となる。

(商品部 小太刀久雄)

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