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破格の480円、AKBが変えたファンクラブの常識

ファンクラブにはコンサートのチケットの優先予約などの特典がある

アイドルやスポーツは古今東西、熱狂的なファンが人気と経営を支えてきた。その一角を担うファンクラブは最近、会員価格の二極化が注目を浴びている。運営側はコアのファンとして囲い込むべきか、低価格化でファンの裾野を広げるべきか。会員は、価格と得られるメリットのバランスをどう取るか――ファンクラブの最近の事情を探った。

年会費88%引き、小学生も視野

AKB48の公式ファンクラブは破格の値下げが話題となった。昨年12月、「二本柱の会」として改めて発足。2006年から続けてきた従来の「柱の会」は入会金1000円、年会費4000円(それぞれ税込み)だったが、今回は年会費を88%安の480円に引き下げた。

価格改定の狙いの1つは、ファンクラブ会員という固定ファンを拡大し、CD販売や全国のライブ公演、イベント等の集客につなげることだ。メールマガジンなどで新曲やツアーの情報を配信し、会員限定の特典をちりばめることでファンの心をくすぐる。AKBの場合は総勢237人(12年度時点)のメンバーを全国のファンが人気投票して順位付けする「選抜総選挙」が恒例行事となっており、会員として投票権を確保することが高揚感をさらにかき立てている。

年間480円(初年度は1480円)なら、小学生のおこづかいでも容易に入会できる。「従来の価格体系では10代後半からの資金に余裕のある世代が中心だったが、ファン層は大幅に広がった」(同ファンクラブを運営するフルキャストマーケティング

ももクロや嵐はAKBの8倍

急速に知名度を上げている5人組ユニット、ももいろクローバーZ。08年に結成してから「いま、会えるアイドル」というキャッチフレーズを掲げ、各地の家電量販店を巡るなど地道な活動を続けてきた。AKBと同様に親近感の湧くアイドルを目指したのが奏功し、日本武道館でライブを開催できるまで成長した。ただ、ファンクラブは入会金1000円、年会費4000円(別途、手数料525円)と、年会費はAKBの8倍する。

男性アイドルのファンクラブも入会金と年会費を合わせて4000~5000円が相場だ。ジャニーズ事務所に所属するSMAP、嵐、NEWSなどはそれぞれ入会金1000円、年会費4000円としている。EXILEは年会費4000円(別途、手数料200円)となっている。

主なアイドルのファンクラブ
アイドル・
チーム
ファンクラブ名入会費年会費
AKB48二本柱の会1,000円480円
ももいろ
クローバーZ
ANGEL EYES1,000円4,000円
SMAPSMAP1,000円4,000円
KARAカミリア
 ジャパン
5,500円
少女時代SONE JAPAN1,000円5,000円
BIGBANGVIP JAPAN1,000円5,000円
アイドリング!!!ファン様クラブ1,050円
(スタンダード会員)
※月額525円
(スタンダード会員)

一方、数年前から流行し始めた韓国アイドルの日本向けファンクラブは若干ながら高め。KARAは入会金がないが、年会費が5500円。少女時代やBIGBANGはそれぞれ入会金1000円、年会費5000円としている。

安心感よりも危機感をあおる

AKBと他のアイドルで、大幅な価格差はどこから生じるのか。ファンクラブに入る理由は人それぞれだが、主な効果は(1)ライブなどのチケット優先予約、(2)ファン向けイベントやテレビ収録への参加、(3)会員であること自体がもたらす満足感、に大別できそうだ。

AKBのケースでは、意外にもチケット予約は会員の主目的ではないようだ。東京・秋葉原のAKB48劇場では、休館日を除けばほぼ毎日のようにライブを開催している。ただ、「公演するチームが複数に分かれているので、お目当てのアイドルが出演する日のチケットを取るのは困難」と嘆くファンも多い。ファンクラブの会員数を増やせば、当然ながら優先予約の効果は薄れる。

高い会費を払ったから席が取れる、という従来のファンクラブの概念とは逆に、「とりあえず入っておかないとイベントに参加できる確率が低くなる」という危機感を生んでいる。

積み上げるとかなりの額に

値下げでファンクラブの敷居を低くするのは、熱心なファン層の反感を招きかねないもろ刃の剣でもある。それでもAKBは「身近なアイドル」を前面に押し出し、チケットや人気投票を巡ってファン同士で競争させることでブームを保っている。

今年6月の選抜総選挙では、総投票数が前年比2割増の138万票にのぼった。ファンクラブ会員だけでなく、対象となるCDの購入や、携帯電話サイトの会員などでも投票権を得られる。好きなアイドルの順位を上げようと1人で複数票を投じるファンも多い。

ファンクラブは年会費480円、携帯サイトなら月額315円、と個々の料金は衝動的に投資しそうな金額だが、この2つだけで年間4260円になる。さらに月額2980円でライブをネット上で視聴できるオンデマンド会員になった場合、年間3万5760円を払うことになる。

ときに「CDを聴きたいのか、投票権をいくつも欲しいだけなのか」が話題になるが、複数のコンテンツを大量に販売できるのはAKBのビジネスモデルならではだ。

お得感でファン誘うスポーツ

一方で、より金銭的なお得感を求められるのが、スポーツのファンクラブだろう。たとえばサッカーでは、横浜F・マリノスの公式ファンクラブ「トリコロールメンバーズ」の年会費が2000円。日産スタジアムでのホームゲームには特別割引が適用され、SS席チケットは一般前売りより500円安い4500円となる。足しげく通うサポーターなら、4回で元が取れる計算になる。ガンバ大阪のファンクラブも「ライト会員」なら年会費1500円で、先行販売チケットは前売り価格より10%安い。

野球の場合は、会員限定の割引や招待チケットがもらえる球団が複数ある。横浜DeNAベイスターズはレギュラー会員の年会費が3000円で、内野自由席2枚がついてくる。横浜スタジアムでの公式戦は内野指定席が500円割引になるので、試合を何度観戦するかで節約できる金額は異なる。ヤクルトはファンクラブ制度を改定しており、会員への割引率は11月中旬に発表するという。

熱狂的なファンの育成が先決

ただ、スポーツのファンクラブが入場料の割引率で集客するのは、アイドルのように「会員であることへの満足感」だけでは物足りないことの裏返しでもある。もし熱狂的なファン層を拡大できれば、割引を強調しなくても自然と来場者数は増えるだろう。

Jリーグで最大の入場収入を誇る浦和レッズはクラブとしてのファンクラブを持たず、個々のサポーターの自治組織に公認を与えているだけだ。応援のための旗を支給するが、特典は一切ない。アイドルもスポーツも、「こいつを勝たせたい」とファンが本気で支援する土壌づくりが経営に欠かせないようだ。

(商品部 小太刀久雄)

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