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「被災者から勇気」 元主砲・山崎武司が語る楽天V

「球団創設から9年でよく優勝したなと思う」。楽天のリーグ優勝決定に、創設時のメンバーの1人である山崎武司(中日)は、新たな歴史を刻んだ後輩たちの活躍に「たいしたもんだ」と目を細める。一昨年まで7年にわたって主砲として新生チームを支えたベテランに話を聞いた。

リーグ初優勝を決め、大喜びの田中(中央)ら楽天ナイン=共同

1年目は2軍レベルだった

――2005年のシーズンから戦いが始まった楽天。プロ野球で51年ぶりに誕生した新球団は文字通りゼロからのスタートをきった。チーム初戦となる開幕のロッテ戦は3-1で勝利するものの、2戦目はなんと0-26で大敗。初年度は38勝97敗1分けの最下位で終わった。

「創設1年目は正直、2軍ぐらいのレベルだったのではないか。バリバリの1軍クラスの選手というのは、岩隈(久志・現マリナーズ)と礒部(公一・現2軍外野守備走塁コーチ)くらい。弱いのは分かっていたけれども、もうちょっと勝てると思っていた。結果的には『しかし、よう負けたな』という思いだった」

「一年一年、ドラフトで入団する"楽天出身"の選手が増えてきて、イーグルスという歴史ができてきた。やっぱり、今や時の人となった田中(将大)が入団してきて、注目度もワンランクアップした気がする」

手応え、1年ごとに上積み

山崎は楽天創設時のメンバー。古巣・中日で今季限りでの現役引退を表明した=共同

――チームは徐々に勝ち星を増やし、5年目となる09年には野村克也監督の下で2位となり、初めてクライマックスシリーズ(CS)に進出する。

「1年目より2年目、2年目より3年目という手ごたえはみんな感じていた。負けは負けだけれど、ボコボコにやられていたのが、ボコボコ負けじゃなくなってくる。善戦なんだけれど、ちょっと最後の詰めで負けちゃうなという感じ。そういう部分では1年ごとに少しずつだったけれど、上積みはあったと思う」

「試合内容が変わってきたり、勝ちだしたりするとがらっとチームの雰囲気が変わる。まずは勝つことがチームとしては一番の薬だったのではないか」

「09年のCSの時は、何の根拠もなかったが自信に満ちあふれていた。だから、第一ステージで『ソフトバンクに負けるわけがない』とみんな思っていた。年々蓄えてきた上積みはあったけれど、CS争いができる立場になってくると、もう一皮むけた感じ。あの時は野村監督の思いが選手に浸透し始めており、組織として動けるチームになっていたのではないだろうか」

――楽天というチームを語る上で忘れてならないのは、11年3月11日に発生した東日本大震災だ。被災地となった仙台に本拠を置く球団として「今、野球をしていいのか」と悩んだこともあった。

避難所に設置されたテレビで楽天の試合をユニホーム姿で観戦する子どもたち(11年4月、宮城県女川町)

もう少し楽天でプレーしたかった

「普通だったら震災の後には、野球なんか見ていられない。だけど、球場に来て応援してくれる人がいっぱいいた。その人たちに恩返ししないとね。これは今でも継続中で、これからずっとイーグルスがやっていかなければいけないことだと思っている」

「東北の人たちは本当に我慢強い。被災地を訪れても『私たちはいいから、もっと被災したところを激励してあげて』という言葉をかけられることも多かった。そういう言葉を聞くと、自分たちのためだけではなくて、そういう方々のためにも、もう一つ二つ思いを付け加えて野球をやらなきゃいかんと思うようになった」

「被災した方々から逆に勇気をもらったことは間違いない。僕は震災の年に退団となってしまったので、そういう意味では申し訳ない気持ちでいっぱいだった。もう少し楽天でプレーしたかったという気持ちは正直言ってある」

優勝は番狂わせ、全選手頑張った

楽天は若手からベテランまで一丸となって戦い、初優勝した=共同

――11年のシーズンは5位に終わったが、その2年後の今年に初の栄冠をつかんだ。

「震災の年はいい報告を東北の人にはできなかったが、今年の優勝は東北中で同じ喜びを分かち合ってほしい。東北で7年間野球をやらせてもらったから、僕のいるうちに何とか優勝を経験したいなと思ったけれど、これは仕方がない。後輩たちがこうやって優勝してくれれば僕も大いにうれしいし、『ようやったな』とほめてあげたい」

――星野仙一監督に率いられた今年の楽天の快進撃。初優勝を果たしたかつての同僚の活躍ぶりに「頼もしい」と感じることが多かったという。

「だれもが今季、楽天が優勝するなんて思っていなかったと思う。本当に番狂わせですよね。すべて選手が頑張った成果だと思うし、すごいことじゃないですか」

「なんといっても田中がすごすぎたよね。若手の枡田や銀次が活躍して、岡島、島内らも頑張った。中堅の嶋たちもリーダーとしてチームを引っ張った。若手だけじゃ勝てないし、ベテランだけじゃへたってしまうし。そういう意味では本当にバランスが良かった」

「そして、補強したジョーンズ、マギーという外国人が頑張ったし、ルーキーの則本も頭角を現した。だから『フルマックス』ですよ。そこまでみんなが調子いいというのはなかなかないのですけれど、その状態を保ったというのが優勝の要因でしょう」

楽天には田中という絶対的な切り札となる「ジョーカー」の存在がある=共同

田中の存在、絶対的切り札

――CS、さらには日本シリーズにも期待が膨らむ。

「短期決戦だから何が起こるかわからない。ただ、優勝したことでCSファイナルステージで得る1勝のアドバンテージはめちゃめちゃ大きい」

「もう一つ、絶対的な切り札となる『ジョーカー』を持っていますから、田中というね。ここで負けるとチームの勢いも危ないなというところで、今季の田中は全部勝ってきた。初めての敗戦がCSにならないようにしてほしい。だから、CS前に1つか2つ負けといたらいいんじゃないのかな(笑)」

「チームの雰囲気を良くするには若手ですよ。銀次が通常通りの野球ができるか。枡田、岡島ら若い力も必要だと思う。それに冷静になれる中堅ベテラン。嶋のインサイドワークというのも大切になってくると思う」

普段の野球やりきること

「短期決戦は打線よりもディフェンス。勝ち抜くためにはペナントレースと一緒の野球をするしかない。CSだから、日本シリーズだからといってよそゆきの野球をやっても勝てないと思うし、大事なのは普段やってきたイーグルスの野球をやりきること」

「まずはCSで勝たないと日本シリーズにはいけない。CSで手応えをつかんで、その勢いでシリーズという流れが一番いいんじゃないですか」

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