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迷い消え真っ向勝負 楽天・則本、2年目の「悟り」

このチームは自分が引っ張っていく。そんな気概が2年目の右腕にあふれている。楽天の則本昂大(23)。昨季24勝0敗と絶対的なエースだった田中将大(米ヤンキース)が抜け、パ・リーグ西武と同率の5位と低迷するチームの中でここまで13試合に登板し、5完封を含む8勝(4敗)、防御率2.29と孤軍奮闘している。(記録は23日現在)

憧れの舞台で初登板初勝利

21日、甲子園での阪神戦。則本は躍動した。序盤こそ制球が定まらずやや不安定だったが、味方の援護を受けた中盤以降は安定していった。四回には自己最速タイの153キロをマーク。直球を主体に押していった。最後は九回2死一、三塁のピンチも、今成を一ゴロに打ち取って、7安打無四球での完封劇だった。

「最終回は力んだけれど、何とか抑えることができた。聖地で勝利できてうれしい」とヒーローインタビューで答えた則本。滋賀・八幡商高時代には甲子園とは縁がなかっただけに、憧れの舞台での初登板初勝利を素直に喜んだ。

この完封劇には大きな記録もついてきた。2011年のダルビッシュ有(米レンジャース)の3完封を上回る交流戦での新記録となる1シーズン4完封。「(記録のことは)前回の巨人戦の登板の前に知った。狙っていました」と充実の表情をみせていた。

昨季、中央球界では無名の三重中京大からドラフト2位で楽天に入団した。140キロ台後半の速球を軸に打者に向かっていく強気の投球は星野監督ら首脳陣の目を引いた。同期の新人でただ1人、1軍の春季キャンプに帯同すると、オープン戦でも結果を残した。

55年ぶりの新人での開幕投手

ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に出場した田中の疲労もあって、パ・リーグでは1958年の杉浦忠(南海)以来55年ぶりとなる新人での開幕投手も任された。結果は6回1/3を投げて4失点で敗戦投手となったものの、以後1年間ローテーションを守り続けて、田中将に次ぐ15勝(8敗)。楽天のリーグ初制覇、日本一の原動力となった。

大黒柱の田中がチームを去った今季。話題の高校出のルーキー松井裕樹は加わったが、必ずしも層が厚いとはいえない楽天投手陣を支える存在として、則本への期待は高まった。エースという称号付きで呼ばれることも増えていった。

指揮官「3年活躍してこそエース」

周囲の期待に応えるように西武との開幕戦では見事な投球を見せた。プロ1年目は八、九回になると燃料切れを起こし、「完投目前で(逆転されて)負けるとか、途中で降りるとか」していたのが、終盤の得点圏に走者を置いたピンチにも動じない。得意の速球、スライダーを駆使して後続を断ってプロ初完投勝利を挙げている。

もっとも、星野監督としては「3年やらなきゃ、エースとはいわない」と手厳しかった。ライバル球団があらゆるデータを使って研究し、投手を丸裸にしていく中で2年目、3年目と続けて結果を残していくのは簡単ではない。そこで結果を残してこそ、岩隈久志(米マリナーズ)、田中と続く、楽天のエースの称号を継ぐ資格を持つことができるのだと。

実際、開幕戦勝利の後は勝ったり負けたりが続いた。4月18日の日本ハム戦で初完封勝利をつかんだと思ったら、次の先発となったオリックス戦では自己ワーストとなる5回11安打9失点でKOされている。交流戦前までは4勝3敗で防御率は3.96と思うような結果を残すことができなかった。少しばかり自信も失いかけた。

交流戦、気持ち切り替える転機に

そうした中で、互いにデータの少ないセ・リーグの打者と対戦する交流戦は気持ちを切り替えるにはいい機会になった。その上、最初の登板が予定されていた5月21日のDeNA戦は雨天順延。そこで、「いい投球ができていた」という昨季終盤のビデオを見直した。

そこには新人らしいひたむきさがあった。下手な駆け引きより、「力と力の勝負」を挑んで打者を打ち取っていく。「勝たなきゃ、という気持ちが強すぎた。僕はまだ2年目。持っているものを出せばいい」。駆け引きは必要だが、勝つことにこだわりすぎ、小手先の技術でごまかすのは自分の投球ではないと。

そう割り切ると、大胆に攻め込む投球ができるようになる。スライド登板となった翌日の試合では速球を軸にして、状況に応じて縦や横、小さく、大きく曲がるスライダーやフォークボールを駆使して打者を翻弄した。被安打2で三振11を奪い無四球、二塁を踏ませぬ完璧な投球。「前回(プロ初完封)とは違う、特別なうれしさ」という2度目の完封を演じると、続く28日の巨人戦でも3安打完封勝利。6月3日の阪神戦の七回に1点を失うまで、27イニング無失点を続けた。

4完封のうち3試合が無四球

面白いもので、迷いが消えて真っ向勝負を志向するようになると制球も安定してきた。交流戦に入っての1試合(9イニング)当たりの与四球はほぼ1。4完封のうち3試合が無四球だった。課題だった七回から九回の被打率も昨季の3割1分4厘から2割4分7厘まで下がっている。

交流戦で9勝15敗と大きく負け越したチームにあって、則本は4勝1敗で防御率0.69。「交流戦が終わっても、続けられるように前を向いて頑張りたい」と気を引き締める。リーグ戦は27日に再開する。病気療養中の星野監督を欠き、首位オリックスとのゲーム差は14.5と厳しい状況。昨季の日本一チームが反転攻勢をかけるには、交流戦で見せたような右腕の踏ん張りが欠かせない。

(馬場到)

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