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窮地で真価、ミドル級村田 48年ぶり金メダリスト

馬力底なし

プロも含めてこんなに新チャンピオンのコールを穏やかに聞いたボクサーは見たことがない。「オリンピックチャンピオン・イズ・ブルーコーナー……」。村田は笑みを浮かべて手を挙げただけだった。48年ぶりのボクシング金メダリストはクールに誕生した。

男子ミドル級決勝、ブラジルのファルカン(左)を下した村田=写真 佐光恭明

ただ、実際の勝負は際どかった。初回こそ5-3でリードしたが、2回は足を使ってきた相手に主導権を握られる。1点差に詰められて迎えた最終回は残り1分半で相手のワンツーをもらって初めて後退、ロープを背負わされた。

ここで踏みとどまれたのは「僕には最後に崩れないスタミナがある」。右フックとボディー打ちで盛り返して終了ゴングを聞いた。採点は1点差。この回序盤にホールドを繰り返す相手に警告が与えられ、村田に2点加点されていた。相手を支持するファンからはブーイングも飛んだが、準決勝に続いて自慢の馬力で勝利を手繰り寄せた。

重量級の金メダルなど日本には縁がないものと思われてきた。「日本人ということを考えたら奇跡。でも、僕はできると思っていた」。一方で素直な真情も吐露した。「僕なんかがメダルを取っていいのかな」

中学時代のやんちゃぶりが担任教師に目を付けられ、高校のボクシング部に連れて行かれたのが始まり。本格的にボクシングを始めた南京都高では恩師の武元前川さんから精神面を含めてリングのイロハをたたきこまれた。東洋大4年で挑んだ北京五輪予選では出場権を逃し「これ以上やっても」と一度はあっさりグローブを外している。

母校の事務職員として第二の人生をスタートさせたが、OBとしてコーチを務めていたボクシング部が不祥事で活動自粛に。責任を感じ、再び意欲が湧いてきた。午後6時までの勤務を終えてからの練習は「(時間が限られる分)考えるようになった」。恩師とは一昨年に死別した。こうした「全てのことが今につながっている」。

金メダルを首にかけられても、表彰台の真ん中で君が代を聞いても涙は出なかった。「これがゴールなら感動して泣き崩れるけど、金を取ってスタートだと思った。金メダルが僕の価値じゃない。これからの人生が僕の価値になる。恥じないように生きていくだけ」。生まれ変わった自分を確信する頂点の味だった。(山口大介)

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