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プライド捨てた改革実る 五輪でレスリング存続

世界中が驚いた2月の「除外危機」から7カ月。国際レスリング連盟(FILA)のラロビッチ会長が「海を渡るような困難な旅」と表現した存続活動が認められ、8日、レスリングが五輪に生き残った。

2020年東京五輪の実施競技にレスリング存続が決まり、吉田沙保里選手らが記者会見(9日未明、東京都内)

2020年東京五輪の実施競技にレスリング存続が決まり、吉田沙保里選手らが記者会見(9日未明、東京都内)

2月のIOC理事会。議題はロンドン五輪の26競技から25の中核競技を選ぶことだった。外れるのは1つ。事前に除外候補とみられていたのは近代五種やテコンドーだった。IOCの発表よりも早く「レスリング除外」を特報したAP通信のニュースに世界が驚いた。

当初は復帰は難しいと思われた。既に野球・ソフトボールら採用を目指す他の7競技は、ロビー活動やキャンペーンを繰り広げていたからだ。「出遅れを取り戻すのは簡単ではない」とFILAの福田富昭副会長も危機感を募らせていた。

もっとも、幸運だったのはIOC理事会の決定に対する反発の声が世界中から巻き起こったことだ。ロゲ会長を含めて15人だけの理事で重要事項を決める理事会の密室政治ぶりを公然と批判するIOC委員もいた。米国やロシア、イラン、日本などのレスリング強国では国家首脳レベルもが声を上げ、存続活動が広がっていった。

レスリングの五輪競技存続が決まり、喜ぶ(左から)米満達弘選手、吉田沙保里選手、伊調馨選手ら(9日未明、東京都内)

ただ、そこでFILAが伝統競技のプライドだけで強気な姿勢を貫いていたら今回の存続はなかっただろう。「なぜ、こんなことになったのかと考えた」と5月に就任したラロビッチ会長。前会長時代はIOCとのコミュニケーションを欠いていたのを反省し、すぐにスイス・ローザンヌのロゲ会長を訪ねて存続へのアドバイスを求めた。「我々は間違っていた」とIOCに従順な姿勢を示し、改革を矢継ぎ早に進めた。

1ピリオド(2分間)の2ピリオド先取制で行われた試合形式を、3分2ピリオドの合計ポイントで争う方式に改めた。各ピリオドで同点の場合は抽選で攻撃権を争うルールも不評を受けて廃止した。FILAの組織改革にも着手。最低でも1人の女性副会長を置くことを決め、アスリート委員会も創設した。「競技はより魅力的に、組織はより近代的になった」とラロビッチ会長。

5月の理事会では野球・ソフトボール、スカッシュ、空手、武術、スポーツクライミング、ローラースポーツ、ウエークボードと争い、投票1回目で過半数を獲得する圧勝。さらに8月には女子を2階級を増やして6階級にし、次回の16年リオデジャネイロ五輪から実施することも決めた。

この夏、ラロビッチ会長はIOC委員が多く集まった水泳や陸上の世界選手権でロビー活動を展開。今回の総会を前にライバルの野球・ソフトボール、スカッシュに対してアドバンテージを築いていた。95人のIOC委員が投票した8日の総会では1回目の投票で過半数を獲得した。

記者会見で「次のステップは?」と質問を受けたラロビッチ会長はこう答えた。「すべての競技団体は常に競技を変えることを考えないといけない。我々は止まることができない。今日1日だけは喜びたいが、明日の朝から働きたい」

うかうかしていると、いつ何時また除外の恐怖が襲ってくるか分からない。巨体を丸めて殊勝に語るラロビッチ会長の姿からは、改めてIOCが持つ強大なパワーを感じずにいられなかった。

(山口大介)

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