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東京で20年五輪 日本のスポーツを新たなステージに

運動部長 北川和徳

半世紀以上の時を経て、夏季五輪が再び日本にやってくる。社会的、経済的にも強烈なインパクトを持つ巨大イベントは、ビジネス感覚に乏しく、時代の変化に対応できずにいる日本のスポーツを新たなステージにバージョンアップする絶好のチャンスをもたらしてくれるはずだ。

90年代以降、プロ化の波が転機

企業と学校を基盤にしてきた日本の競技スポーツは、1990年代以降、プロ化の波にさらされ転機を迎えた。不況で企業スポーツの廃部が相次ぎ、企業の広告塔として繁栄してきたプロ野球も興行で黒字化しているのは一部球団にすぎないことが露呈。地域密着を掲げて成功したサッカーのJリーグをきっかけに、さまざまな競技で自立を目指すクラブチームが全国各地に生まれたが、多くは収入を拡大できず存続に苦しんでいる。

最近では、公金である補助金をきちんと管理できない競技団体の組織としてのガバナンスの欠如、現場での暴力的な指導のまん延など、旧態依然のスポーツ界の古い体質も改めて問題視されている。

五輪メダリストでも一部を除けば競技を続ける環境づくりに苦闘する。閉塞感さえ漂う現状に、7年後に控えた東京での五輪はどんな変化をもたらすか。国立競技場の全面改装をはじめ、競技・トレーニング施設は充実する。メダル倍増を目指して国からの強化費の配分も大幅に増える。選手やチーム、そして競技そのものにも、企業など民間の資金が集まりやすくなるだろう。

持続的に成長できるシステム必要

だが、与えられたものを享受するだけでは、五輪が終われば元のもくあみ。この機会を最大限に活用し、たとえマイナー競技であっても持続的に成長できるシステムを新たに作り上げることが必要だ。

地域活性化に必死で取り組む地方都市で今、スポーツは新たな価値を示しつつある。国内外から客を呼び込むための貴重な観光資源として活用されている。サッカーJ2の札幌には7月、ベトナムのスター選手が入団した。急速に経済発展するベトナムから北海道への集客が狙えるのはもちろん、スポンサーである地元企業の新市場へのアピールにもつながる。

サッカーでは札幌のほかにも複数のチームがアジア出身選手の獲得に動いている。全国で20都市を超えるまで拡大したバスケットボールのbjリーグにも、バスケットの盛んなアジア各国を照準に同様の動きが出てきそうだ。

「スポーツは都市セールスの重要なコンテンツ」と日本スポーツツーリズム推進機構会長でもある早大の原田宗彦教授。海外からの集客も意識したマラソンなどのスポーツイベントも、各地で続々と開催されている。

スポーツ自体の価値高まる

企業スポーツは衰退の一途だが、実はスポーツ自体の価値は高まっている。スポーツの広告効果を算出して企業をコンサルタントする市場調査会社レピュコムジャパンの秦英之社長は「その価値をきちんと活用すれば、スポーツに民間の資金をもっと呼び込むことができる」と話す。環太平洋経済連携協定(TPP)によって国内外で市場の開放が進む。東京五輪の開催によって、こうした動きが加速するのは間違いない。

スポーツ関連の行政機構を一つにまとめたスポーツ庁の設置も五輪決定とともに確実になった。競技スポーツだけでなく、医療費削減にもつながる生涯スポーツの振興やスポーツツーリズムの推進、スポーツ産業の育成などに政府も本腰で取り組むはずだ。

経営感覚ある人材の育成急務

問題は競技団体やリーグ、チームといったスポーツ側が、このチャンスを活用できるのかということ。プロ野球ですら興行での黒字化を求められなかったこの国では、ほとんどの競技で経営という概念すらなかった。

幸いにもスポーツ界でビジネスやマネジメントの仕事をしたいと望む学生は多い。スポーツへの投資が膨らむ五輪までの間に、人材の育成が急務となる。

64年の東京五輪が日本の競技スポーツを育てる基盤を作った。実業団チームに日本リーグという競い合う場が整備され、選手が安心して競技に打ち込めるようになった。一方で、その体制にスポーツ界は甘え、自立することを半ば放棄してきた。

時代の変化に老朽化したシステムがさび付き、限界に近づいているタイミングで、56年ぶりに五輪が戻ってくる。日本にスポーツを本当の意味で根付かせるため、これからが正念場だ。

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