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監督たちの戦い 球団の"変心"にも泰然 巨人・原監督のプロ意識

スポーツライター 浜田昭八

東海大相模高が1970年代半ばに原貢監督、主砲原辰徳の親子コンビで夏の甲子園大会に出場したときのこと。身内をチーム内に抱える難しさを尋ねると、貢氏は「私は監督のプロ」と短く答えた。情にほだされたり、他選手を気遣ったりするようでは監督は務まらぬというわけだ。

父・貢氏の監督像に近く

巨人で通算10年目の原辰徳監督(55)を、いまさら「監督のプロ」になったと褒めるのは失礼だろう。だが、おいの投手、菅野智之が同じチームにいると感じさせない言動は、父親が身をもって示した監督像に近い。「トモ」と菅野を呼ぶのも、他選手をファーストネームで呼ぶのと同じスタンスだ。

今季は開幕ダッシュに成功して快調にトップを走った。セ・パ交流戦の間に2度、延べ5日間だけ阪神に首位を譲ったが、すぐに奪回した。セの各球団が苦しんだ交流戦でも13勝10敗1分け、12球団中の3位だった。

ただ、前半戦終了前にナゴヤで中日に3連敗する不覚をとり、2位阪神との差が2.5ゲーム差に接近した。これが今季最大のピンチ。それも、後半戦開始後に巨人は復調、阪神は不振という状況が重なり、差は広がった。あとは阪神の抵抗を退け、ゴールを目指すだけだ。

狭い東京ドーム味方に圧倒

投手陣は菅野、杉内俊哉、内海哲也を中心にした先発陣、山口鉄也、マシソンの中継ぎ陣、ストッパー西村健太朗が盤石だった。チーム防御率は群を抜いており、この上に沢村拓一、ホールトンが普通の状態だったら、手のつけられない独走になっていた。

攻撃陣は原監督が「勝負強さが足りない」と嘆く試合がいくつかあったが、それはぜいたくな悩み。阿部慎之助、坂本勇人を中心にした打線は、狭い東京ドームを味方にして相手を圧倒した。外国人勢も故障で一時離脱したが、ロペス、ボウカーが力を発揮した。

誤算はあった。開幕投手に起用するほど期待した宮国椋丞が、相変わらず安定性を欠いた。速球は素晴らしいが、精神的にもろい。7月25日の広島戦では7安打、8失点で序盤にKOされ、2軍落ちした。

打者でも近い将来の4番打者と注目された大田泰示が、いまだに1軍に定着できない。主力では長野久義が前半戦で低迷した。「もっと危機感を持ってほしい」と、この優等生に対して原は珍しく注文をつけた。

若手登用、機会あるごとに

機会あるごとに、若手を登用しようとした。その中から、中井大介が二塁のレギュラーの座に手をかけた。二塁手の固定は巨人の懸案事項だったが、やっと中井で解決しそうだった。ところが、8月4日の阪神戦で中井が左ヒザを痛めて登録抹消。またやり直しとなった。

若手の抜てきは2軍勢や控え組に勇気を与え、主力勢を刺激する。原監督もこの古典的な手法を採り入れているが、「若手を育てるのを一番の目的にした起用ではない」と言う。あくまでも、勝つために最善の方法をとっていると言いたいのだ。

優勝を争う人気球団には、若手育成のために勝敗抜きの起用は許されない。最近よく見られる若手投手の覇気のない投球に、原監督は不満を抱いている。「甘えは許されぬ。試合に出るのは、勝つために重要な役割を背負っているからだ。失敗しても、明日につながる投球を見せてほしい」

去就、風向きに微妙な変化

球団は原監督の手腕を高く評価しながらも、このところ"勇退"を促すかのような微妙な動きを見せている。松井秀喜氏への接近は、明らかに"次"を意識した動きと見るほかはない。

渡辺恒雄会長は、日本一になった昨年の秋には「原以上の監督がいるかね」と絶賛していた。ところが、このところ風向きが微妙に変わり、よく松井氏の名前を口にする。松井監督はすぐに実現しないまでも、まず来春の沖縄キャンプの臨時コーチに招き、それを巨人復帰への足がかりにしたいのではないか。

だが、原監督は泰然としている。胸中は穏やかでないだろうが、戦いが続く最中に去就問題で騒がれたくない。9シーズンの監督在任でセ・リーグ優勝5度、うち日本一3度というプライドもある。10年目の今季、リーグ優勝と日本一を1つずつ積み増して、静かに去ろうとしているのだろうか。

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