2019年6月16日(日)

野田新首相も話した「サッカー語」
編集委員・武智幸徳

2011/9/1付
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Jリーグが1993年にスタートした後、記事を書く際にポジションやルールなどの専門用語をどの程度使っていいか悩んだものだ。「オフサイドって何?」と真剣に問い合わせてくる読者がいたくらいだから、事あるごとに頭の中で説明がいる、いらないを線引きしながら書いていた。

それを思うと、8月31日の民主党の両院議員総会で野田佳彦新首相が語った言葉には、隔世の感を覚えた。

「みなさんにはミッドフィルダーになってほしい。私も含めてセンターフォワードになりたい人はたくさんいるが、この党に今一番必要な役割は一人ひとりのかけがえない能力が存分に発揮できる組織づくりだ」

「全体を見渡して戦略的にパスを回せるミッドフィルダーの集団が必要です」

一国のトップになろうとする人がこう話して、何が問題でどうしたいのか、サッカーをイメージしながら通じてしまう世になっていた。本当にいつの間にか。

日常会話にスポーツ用語が織り込まれるのは、どこにでもある風景だろう。「オレの人生、今が土俵際」「彼女はうちの課のエースです」「全員野球で頑張ろう」など。「歌は世につれ、世は歌につれ」ではないが、そこに"サッカー語"も加わってきたのだろう。

最初は、「あいつにはレッドカードだな」という程度だったのが、どんどん高度になってきた。それは、サッカー文化がこの国に着実に定着してきた証しでもあるのだろう。

あるいは、現在の混乱した日本の状況を表現するのにサッカーが今、一番しっくりくるのかもしれない。どんなにヘボな草野球でも秩序(打順、守備位置)らしきものは必ずあるが、一つのボールを奪い合うサッカーは下手をすると無政府状態に陥る。ボールの代わりにひたすら相手のスネをけるような。

新首相の弁で政界にはFW気質の人が多いことを改めて知った。日本のサッカー界は逆でMFにタレントが出る。フリーな選手が横にいてもパスを出さないでシュートを打つ、外しても平気で謝りもしない。ゴーイングマイウェイ。そんな巨大なエゴの塊が日本サッカーに見当たらないと思っていたら……。生息する場所が違っていたのでしょうか。

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