3Dプリンターで事件現場を再現 裁判員裁判で活用へ
裁判員裁判で検察官が殺人事件の現場の状況などを分かりやすく説明できるように、警視庁は3次元画像から立体を造形できる「3Dプリンター」の積極的な活用に乗り出す。現場の写真や平面図を見せるより、一般の市民にも間取りや家具の配置などをイメージしやすい利点がある。同庁は具体的な活用方法などについて東京地検と協議を進めている。
警視庁が使用するのは、石こうでカラーの立体を造形できる米国製3Dプリンター。殺人事件や火災の現場を持ち運び可能な専用カメラで撮影し、3次元画像のデータを作成。壁の色、家具の形状や配置など、実物そっくりに再現した立体模型を作製できる。
同庁はすでに複数の事件で裁判資料としての利用を想定して立体模型の試作を開始。法廷に模型を持ち込み、検察官が犯人の侵入経路、複数の人物の位置関係などを指しながら説明することで、「一般市民の裁判員らにも現場の状況を理解してもらいやすくなる」(捜査関係者)とみている。
現在の公判では、検察官が現場の平面図や写真を基に犯行状況などを説明するのが一般的。一部の裁判員裁判では、手作業で作った立体模型を使用したケースもある。
インド洋でのタンカー襲撃事件で海賊対処法違反の罪に問われた自称ソマリア人被告の裁判員裁判では、検察側がタンカーの模型を使って犯行グループの侵入経路などを説明した。
立体模型の作製に3Dプリンターを使えば「手作業よりも精密な模型を速く作れるようになる」(同)という。
警視庁が同庁科学捜査研究所に3Dプリンターを導入したのは2010年11月。すでに捜査の現場では活用が進んでおり、殺人事件の被害者の陥没した頭の骨を模型化し、凶器の形状と照合したケースもあった。
同庁幹部は「3次元データさえあれば、他にも被害者の傷口の立体形状など、保存不可能なものの再現が可能になる。3Dプリンターならではの利点を、捜査や裁判でさらに幅広く生かしていきたい」と強調している。