/

官邸の介入強めた班目発言 「水素爆発ない」

東電は再三の撤退申し入れ 民間事故調報告

東京電力福島第1原子力発電所の民間版事故調査委員会「福島原発事故独立検証委員会」(委員長・北沢宏一科学技術振興機構前理事長)は27日、独自に事故を検証した報告書をまとめた。政府の事故調では未聴取だった事故当時の菅直人首相をはじめ、日米政府関係者らへヒアリング。専門家が役割を果たせず、官邸も場当たり的な対応を繰り返したことが混乱を広げたと指摘した。(本文中の肩書はいずれも当時)

官邸

約3キロ離れた地点から撮影した東京電力福島第1原発の現在の全景(26日)=共同

 事故後の昨年3月12日午前6時すぎ、ヘリコプターでの原発視察で、首相は同乗した班目春樹原子力安全委員長に「俺の質問にだけ答えろ」と命じて他の説明を拒否した

首相が東電本店や福島第1原発に乗り込むなど、官邸が現場への介入を強めていった背景について、報告書は(1)マニュアルの認識不足(2)専門家への不信感(3)災害拡大の危機感(4)首相の管理手法――などが重なったと分析している。

事故後の原発視察で首相から水素爆発の可能性を問われた班目委員長は「ない」と答えた。しかし帰京後に官邸で1号機の水素爆発の映像がテレビで流れる。委員長は「あー」とだけ言い、頭を抱えて前のめりになった。ぼうぜん自失し「(水素爆発とすぐにわかったが)誰にも言えなかった」。経済産業省・原子力安全・保安院や東電の幹部も説明に窮する場面が相次いだ。「この人たちのいうことも疑ってかからなければいけないな」(海江田万里経済産業相)。官邸側は専門家への不信感を募らせていった。

報告書が指摘した主な問題点
○過酷事故への備えを怠った東電の組織的怠慢
○原子力災害をタブー視する絶対安全神話
○官邸主導による現場への過剰介入
○国民とのコミュニケーション不足による政府の信頼喪失
○原子力安全規制のガラパゴス化と能力不足

官邸内では3千万人の首都圏退避の「最悪のシナリオ」が話題に。枝野幸男官房長官は「悪魔の連鎖になる」と感じた

報告書は、「最悪のシナリオ」などが話題になり始めた結果、原子力災害対策マニュアルに定められていない官邸の関与が進んだとしている。

米国

米国の支援対応は早く、米軍や原子力規制委員会(NRC)関係者ら160人のスタッフを日本に派遣。日本政府の収束策を見守り支援要請を待った。だが、日本側が3月12日に米NRC委員長の支援の申し出を断ったことで、米側は情報共有が十分でないことに不信感を強めた。

 ルース駐日大使は同14日深夜に米専門家を官邸に常駐させたいと申し出たが、枝野官房長官は難色を示した。米は4号機の使用済み核燃料プールが干上がって爆発するのを懸念し、同17日に米国民の出国勧告を行うなど日米関係は危機に直面した。細野豪志補佐官らの日米調整会合が同22日に発足して、ようやく情報共有が進み関係が改善したという。

かねて米NRCは同時多発テロを受けて日本に核テロ対策強化を促していた。安全性が高まるチャンスだったが、「保安院は全く関心を示さなかった」(NRC幹部)。

東電

東京電力の清水正孝社長は海江田経産相や枝野官房長官に繰り返し電話し、「とても現場はこれ以上もちません」などと撤退の許可を求めた

清水社長が3月15日午前3時ごろ、海江田経産相や枝野官房長官らに約1時間にわたって繰り返し電話し、第1原発からの撤退を再三申し入れていたことも判明した。

両大臣は午前3時20分ごろ、寝ていた首相を起こして報告したが、首相は「そんなことはあり得ない」と強く拒否。午前4時17分に清水社長を官邸に呼び「撤退はあり得ない」と直接念を押した。清水社長は消え入るような声で「はい」と答えたという。

東電は「全面撤退ではなく一部撤退の要請だった」としている。しかし民間事故調は「全面撤退でなければそこまで繰り返し電話しないはずだ」などと、全面撤退を求めていたと推定している。東電は聴取に応じていない。

春割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で申し込むログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で申し込むログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で申し込むログイン