福岡空港の管制ミス、原因は「到着機を失念」
安全委、11年5月のトラブルで報告書
福岡空港で昨年5月、管制官が航空機2機に離陸と着陸の許可を同時に出し、到着機が着陸をやり直した問題で運輸安全委員会は27日、管制官が滑走路の点検などに意識を奪われて到着機の存在を忘れたことなどが原因と推定する調査報告書をまとめた。別の機に離陸許可を出した際、レーダーモニターで空港周辺の航空機の位置を十分に確認することも怠っていた。

トラブルは昨年5月10日に発生。宮崎発の日本エアコミューター(JAC)3626便(ボンバルディアDHC8-402型)が管制官の着陸許可を得て着陸態勢に入っていたところ、出発前の那覇行き全日空487便(ボーイング767-300型)が誘導路から滑走路に進入。JAC機は着陸をやり直した。
JAC機は空港まで約3キロに迫り、着陸まで40秒程度だった。
報告書によると、管制官はJAC機に着陸許可を出した後、別の航空機が鳥と衝突したことによる滑走路点検などに意識を奪われ、この間に他の航空機との交信がなかったこともあって、JAC機の存在を忘れたとみられる。
その後、地上の全日空機から離陸を求める通信を受け、滑走路に降りてくる機がないか目視で確認しようとしたが、雨のため視界が悪く、よく見えなかった。本来確認すべき、空港周辺の航空機の位置を知らせるレーダーモニターを十分に確認しないまま、着陸する機はないと判断して離陸許可を出した。
JAC機から着陸許可を確認する通信が入ったことで同機の存在を思い出し、着陸のやり直しを指示した。
管制室では通常、離着陸機の情報を小型の表示板に張り付けて失念しないようにする「リマインダー」と呼ばれる札が使われるが、福岡空港の管制室では現場職員の判断で使用していなかった。他の管制官も滑走路点検に意識を奪われ、ミスを防げなかった。
国土交通省航空局は再発防止策として、福岡空港の管制について二重監視体制やリマインダーの使用を徹底するとともに、離陸を待つ航空機に滑走路の状況を知らせる表示灯の導入を今年度中に完了する。