「おしん生家」修復不能、資金難で屋根崩落のまま

1980年代を代表する国民的テレビドラマ「おしん」で主人公の生家の設定で使われた山形県中山町の古民家が大破したまま、放置されている。老朽化したかやぶき屋根が昨年の雪で崩落。「おしんの生家保存会」は多額の費用がかかる修繕を断念した。おしんファンからは惜しむ声が上がりそうだ。
築100年を超える古民家で、おしんのロケ地選定では周囲の里山風景とともに白羽の矢が立った。ドラマ放送後、見学に訪れるファンが増えたため、町おこしの観光スポットにしようとの声が上がり、地域の有志が保存会をつくってボランティアで保存活動を開始。建物を譲り受け、維持管理を続けてきた。2001年にはテレビのクイズ番組で獲得した賞金1千万円で全面補修したが、今回修理するとそれ以上かかるもよう。

集落はすでに70年代に廃村状態になっていたといい、鈴木光雄会長(74)も集落を去った1人。「現在の大破した姿では鑑賞に堪えない。直すお金もないし、保存活動の後継者もいない」と残念そう。町の観光協会は「ロケ地を利用した地域おこしは今では当たり前だが、80年代は珍しくノウハウがなかった」と、観光資源として生かしきれなかったことを認める。
「おしん」は83年放送のNHK連続テレビ小説で、橋田寿賀子さん原作。貧しい中でたくましく生き抜く日本女性を描き、アジアを中心に60カ国以上で放送された。中山町の「生家」には、海外からの見学者もあった。〔共同〕