混合診療禁止は「適法」、原告の敗訴確定 最高裁
保険診療と保険外診療を併用する「混合診療」で保険適用が認められないのは不当だとして、がん患者の男性が保険適用の確認を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(大谷剛彦裁判長)は25日、混合診療の原則禁止を適法とした二審判決を支持、原告側上告を棄却した。原告側敗訴が確定した。
混合診療は健康保険法に明文の禁止規定がなく、国が法解釈で禁じていることが妥当かどうかが争点だった。
同小法廷は判決理由で、無制限に混合診療を認めると患者負担の不当な増加を招くなどの懸念から、混合診療は認めないのが原則とされてきたと指摘。それを前提に、特定の診療に限り混合診療を認める「保険外併用療養費制度」があるとし、「法律上の文言は明瞭でないものの、法体系全体の整合性からすれば、同制度に該当しない混合診療は一切保険対象外とする解釈が導かれる」と結論付けた。
法の下の平等を定めた憲法に反するとの原告側主張には「安全確保や財源の制約などから、保険適用の範囲を合理的に制限することはやむを得ない」と述べた。
5人の裁判官の全員一致。ただ、4人が国に制度の運用改善などを求める個別意見を付けた。
裁判長を務めた大谷裁判官は「法構造が甚だ分かりにくい」「場合によっては患者に過剰な規制と映る」と批判。「医療の高度化は目覚ましく(制度の)迅速で柔軟な運用が期待される」と、先進的な医療を素早く保険外併用療養費制度の対象にするよう求めた。田原睦夫裁判官も「海外で安全性が確認された新薬の早期使用は患者が切望している」と指摘した。
寺田逸郎裁判官は、一審からの裁判全体を振り返ると法解釈の議論が大半だったとして「制度全体について検討が求められていたのではないか」と述べ、混合診療の是非について議論の深まりが足りなかったとの見方を示した。
2007年の一審・東京地裁判決は「混合診療を保険対象から排除する規定はなく、国の法解釈は誤り」として、混合診療の禁止は違法とする初判断を示した。
これに対し09年の二審・東京高裁判決は「保険外併用療養費制度に該当するもの以外は保険給付を受けられないと解釈すべきで、混合診療は原則禁止と解するのが適当」と、原告側逆転敗訴を言い渡した。
小宮山洋子厚生労働相の話 国のこれまでの主張が認められたものと考えている。