巨大津波 警鐘間に合わず 研究者落胆「数年先ならば」
東日本大震災

2011/3/26付
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産業技術総合研究所(茨城県つくば市)の研究チームは東日本大震災の発生前に、沿岸部の地層調査などから巨大津波に襲われる可能性を指摘し、対策を急ぐよう警告していた。研究者は「あと数年先なら、もっと手を打てたはず」と肩を落としている。

研究チームが調査を始めたのは2004年。東北では三陸海岸がたびたび津波被害を受けた歴史があり、専門家の間では古文書の記載などから、869年の貞観地震で仙台市なども巨大津波に襲われたと推定されていた。

宍倉正展チーム長らは古い地層に残る痕跡から巨大津波の詳細を明らかにしようと計画。ジオスライサーという特殊な器具などで宮城県や福島県、茨城県などの約400カ所の地層を採取した。

この結果、9世紀ごろの地層に、津波によって海から内陸に運ばれた堆積物を確認。石巻では海岸から少なくとも約3キロ、仙台は約2キロ、福島県沿岸は約1.5キロが浸水していたことが明らかになり、最低でもマグニチュード8.4程度の大地震が起きた、と結論づけた。

その後の調査で、15~16世紀にも、東北から北関東の太平洋沿岸の少なくとも約200キロの範囲で巨大津波の被害があったことが判明。宮城・福島沖では450~800年程度の周期で巨大津波が発生しているとして、学会などで警告していた。

研究で明らかになった巨大津波の危険は、同研究所の月報でも昨年夏に紹介。「宮城県から茨城県にかけて、いつ巨大津波に襲われてもおかしくない」として、対策を急ぐよう呼びかけていた。

政府の地震調査研究推進本部(本部長・高木義明文部科学相)もこうした指摘を受け、2011年春の改定で国の防災対策の基になる「地震活動の長期評価」に反映させる準備をしていた。

宍倉チーム長らは自治体の防災担当者らにも訴えたが「そんなことを言われても」と反応は鈍く、東京電力も昨年、福島県沿岸部で古い津波の痕跡を調べ始めたが、原発の対策強化にはつながらなかった。

沢井祐紀研究員は「恐れていた事態が起きてしまった。あと数年の猶予があれば、もっと住民に注意喚起できたのだが……」と悔しがっている。

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