保育園や産婦人科、水確保急ぐ 水道水から基準超すヨウ素
東京都内の浄水場で乳児向けの規制値を上回る放射性ヨウ素が検出されたことがわかった23日、産婦人科や保育園は慌ただしくミルクの作り直しや、ミネラルウオーターの確保などに追われた。子育てに、生活に欠かせない水を巡る問題。「赤ちゃんに影響は出ないのだろうか」。母親に不安が広がった。
水口病院(東京都武蔵野市)は同日午後の都の発表直後にミルク用の飲料水を追加発注。「入浴は大丈夫か」「食器洗いは?」。看護師らを集めた緊急会議で水道水を使う業務一つ一つを確認。理事の女性は「混乱しないように情報を精査したい」とせわしげだった。
毎月平均120人の新生児が生まれる「東京衛生病院」(東京・杉並)は作り済みのミルクを廃棄し、震災直後から備蓄を増やした飲料水で作るように急きょ変更。担当者は「さらに確保しないと」と対応を急いだ。
30人以上の乳幼児を預かるマミーズエンジェル神田駅前保育園(千代田区)はミルクに煮沸した水を使っていたが、加藤てるみ施設長(54)は「すぐペットボトル入りの飲料水に切り替えた」。
世田谷区内の私立保育園は前日に「健康への影響はなく水道水の使用を続ける」という手紙を保護者に送ったばかり。規制値を上回る放射性物質の検出に、園長は「対応を変えなければならないが、行政も電話が鳴りっぱなしのようで……」と困惑していた。
江東区は防災倉庫に備蓄していたミネラルウオーターの2リットル入りペットボトルを区内の保育園など145施設に3本ずつ配った。世田谷区は0歳児については家庭から水道水以外の飲料水を持参してもらうよう区立保育園に連絡した。
「お1人様1箱まで」と飲料水売り場に張り紙がされた江東区のスーパーでは「もう水はないのか」と店員に尋ねたり、仕方なくお茶やジュースを買っていったりする客の姿が目立った。
同区の主婦(35)は6カ月の長男を抱えスーパーに駆け込んだが、完売のため水が買えずぼうぜん。ミルクを飲ませているといい、「子どもの将来にかかわる問題。東京でも安全な水を給水してほしい」と訴える。
生後1カ月半の男児を母乳で育てる北区の主婦(29)は「自分が飲む麦茶やコーヒーは水道水。母乳を通じて放射線の影響が出ないか心配」と不安そうに話していた。