裁判員裁判、量刑柔軟に 司法研報告書、死刑判断「先例尊重」
最高裁司法研修所は23日、裁判員裁判での量刑判断の在り方についての研究報告書をまとめた。死刑判断にあたっては、公平性などの観点から「先例を尊重すべきだ」と提言。死刑か否かが焦点となった過去30年間の裁判官による裁判で、何が死刑選択の判断要素になったかも分析し、被害者数や犯行の計画性などが重視されている傾向が浮き彫りになった。
死刑の判断基準としては、「動機」や「結果の重大性」など9項目を列挙した最高裁の「永山基準」が長年用いられてきたが、報告書は「考慮すべき要素を指摘しているだけで、基準とは言い難い」と指摘。同基準は法曹関係者の間でも曖昧だとの意見が出ていた。報告書は今後の裁判員裁判の評議の中で、各地の裁判官が指針として活用するとみられる。
報告書は、死刑かどうかの判断は公平性が強く求められ、先例の集積が犯罪抑止力となっている点を重視。「多数の先例の中で比較して初めて、対象事件の重大さが評価できる」とした。
そのうえで、過去の死刑求刑事件で何が判断要素となったかを分析した。
対象は1970年以降に判決が言い渡された死刑求刑事件のうち、2009年までの30年間に死刑か無期懲役が確定した346件(死刑193件、無期懲役153件)。死刑が確定した割合は、被害者が1人死亡の場合は32%、2人だと59%、3人以上が79%で「被害者数と死刑判決との間には、かなりの相関関係が認められる」とした。被害者数重視の傾向がデータで初めて裏付けられた。
1人死亡の事件で死刑となった32件のうち、別の事件で無期懲役となり、仮釈放中に事件を起こしたケースが10件と最も多く、「死刑判断の決定的な要素」と分析した。強盗殺人事件に限ると、死刑となった14件のうち8件は当初から殺害を計画しており、計画性も重要な要素となっていた。
また殺人罪で起訴された事件のうち、一審判決が死刑だった割合は05~09年が0.99%で、戦後混乱期の46~54年(1.02%)に次ぐ高水準だった。55~94年は0.2%台で推移、95~04年に0.63%に上昇しており、報告書は「オウム真理教事件などが厳罰化の転機となった」と分析した。