人工知能が東大模試挑戦 「私大合格の水準」
国立情報学研など
国立情報学研究所や富士通研究所の研究チームは23日、人工知能を載せたコンピューターで東京大学入試の模擬試験に挑んだと発表した。数式の計算や単語の解析にあたる専用プログラムを使い、実際に受験生が臨んだ大学入試センター試験と東大の2次試験の問題を解読した。大手予備校の代々木ゼミナールの判定では「東大の合格は難しいが、私立大学には合格できる水準」だった。
チェスや将棋ソフトで力をつけた人工知能がまた進歩をみせた。
研究チームは「ロボットは東大に入れるか」を掛け声に、2021年度には東大入試に合格できる水準の人工知能を開発する目標を掲げている。
富士通研究所などと「東ロボくん」と名付けた人工知能ソフトを開発中で、一般の模試で初めて力試しをした。
あらかじめコンピューターが分かる文字列や記号に換えた文章や図、写真をコンピューターに入力。科目ごとに専用のプログラムに基づいて計算やシミュレーション(模擬実験)をして、選択肢や数式で結果を出力する。
模擬試験は代々木ゼミナールが作成。センター試験の科目は英語、国語、数学2科目、物理、世界史、日本史。人工知能は全科目900点満点のうち387点(偏差値45)をとったが、受験生の平均点の459点に及ばず、東大合格は難しいという。
東大の2次試験は文系と理系の数学を解いた。2次試験にある理系の数学の偏差値が61.2、文系の数学の偏差値が59.4となり、過去の東大合格者の平均を上回った。
センター試験の特定科目で合格を認める私立大学も多い。「今回の成績で私立大学579大学のうち、403大学の合格可能性が80%以上(A判定)だった」(代々木ゼミナール)という。
研究チームが成績を分析したところ、受験生の正答率が約2%だった数学の問題は、数式を駆使して解けた。逆に「箱から複数のカードを取り出す確率」といった想像力を求められる問題は苦手だった。
東大入試を目指す人工知能の開発計画は、コンピューターに何ができて何ができないかを明らかにするのが狙いだ。研究チームによると、当面は16年度にセンター試験で高得点をとるのが目標という。国立情報学研究所の新井紀子教授は「直近の目標は大学の入試を解いて、A判定を出すことだった。来年の目標点数を今年、達成できてうれしかった」と語る。