腎不全患者の尿毒素、人工繊維で吸着 携帯型装置に道
腎不全患者の血中に含まれる尿毒素を吸着することができる人工繊維を開発したと物質・材料研究機構(茨城県つくば市)の荏原充宏主任研究員らのチームが19日、英科学誌電子版に発表した。災害時に携帯できる小型の透析装置の開発につながると期待される。
慢性腎不全の患者は血中の老廃物や尿毒素を腎臓でろ過しきれず、透析が必要となる。チームは代表的な尿毒素のクレアチニンを吸着する性質がある鉱物ゼオライトを樹脂に混ぜ、極細の繊維を作ることに成功。布状にして血清で実験したところ、約16グラムの繊維があれば、体重60キロの人が1時間に作る量のクレアチニンを全て吸着できることを確認した。
国内で透析治療を受けている患者は30万人超とされる。透析には大量の水と電気を使う大掛かりな装置が必要で、東日本大震災では被災地の患者が遠方に避難を迫られる事態となった。
荏原主任研究員は「吸着率を向上させれば、腕時計型の装置でも透析治療が可能になるかもしれない」と話している。〔共同〕