猪瀬知事が辞職表明 「都政を停滞させられない」
徳洲会グループ5000万円問題で引責
東京都の猪瀬直樹知事(67)は19日午前、医療法人徳洲会グループから5千万円を受け取った問題を受け、都議会議長に辞表を提出した。その後、都庁で記者会見し、「私の問題でこれ以上都政を停滞させるわけにはいかない」と辞職を正式表明した。猪瀬氏の辞職に伴う都知事選は来年2月上旬までに行われる見通しで、与野党は都知事選の候補者擁立に向けた調整を本格化させる。
猪瀬氏は昨年12月の都知事選で史上最多の約434万票を獲得し当選したが、資金受領問題で都議会などから厳しい追及を受け退陣に追い込まれた。在任期間は約1年と歴代知事で史上最短となった。
猪瀬氏は会見で「局面を打開するためには自ら都知事の職を退くよりほかに道はない。都民、国民の皆様には申し訳なく思っている」と述べた。資金受領問題については「自分なりに説明責任を果たしてきたつもりだが、疑念を払拭するには至らなかった。私の不徳の致すところ」と話した。「たまたま個人的にお金を貸してくれる人がいたので借りたが、借りるべきではなかった」とし、「(徳洲会グループ側から)特別何か依頼されたり、こちらから頼んだりしたことはない」と強調した。
自民党の石破茂幹事長は19日午前、東京都連幹部と協議し、年内の候補者決定を目指す方針を確認した。党内では小池百合子元防衛相や下村博文文部科学相、橋本聖子参院議員らの名前が取り沙汰されている。7月の参院選への出馬を見送った元新党改革代表の舛添要一氏、日本維新の会を離党して衆院議員を辞職した東国原英夫氏らの名前も浮上している。
資金受領問題は11月22日に発覚。猪瀬氏は都議会などで「生活の不安を感じ、個人的に借り入れた。全額を返済しており、問題はない」との答弁を繰り返し、続投の意向を強調していた。
都議会は当初、総務委員会で審議を進めたが、「答弁が二転三転し信用できない」などと反発。強制力のある調査権を持つ調査特別委員会(百条委員会)を設置することを決定していた。
資金受領問題を巡っては、徳洲会グループの公職選挙法違反事件を捜査中の東京地検特捜部に対し、市民団体などが公職選挙法違反(虚偽記載)容疑などで告発状を提出。特捜部は同氏の刑事責任の有無を慎重に判断するとみられる。
都知事が不在となることで、20年東京五輪の開催準備への影響が懸念される。大会組織委の設置は設置期限が来年2月とされ、日本オリンピック委員会(JOC)と国との調整は最終局面に入っている。人事や組織体制は国が主導権を握ることになりそうだ。
猪瀬氏は1983年に作家デビュー、87年に「ミカドの肖像」で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した。02年からは小泉政権で道路公団民営化推進委員を務めた。07年から石原慎太郎前都知事の下で副知事を務めた後、前知事の後継として12年の知事選で初当選。20年東京五輪の招致活動を指揮した。