京大、大腸がんの転移抑制する遺伝子発見
京都大学の武藤誠教授と園下将大講師らは、大腸がんの肝臓や肺への転移を抑える遺伝子を見つけた。がん細胞で転移の引き金となる信号伝達を妨げるという。新たな抗がん剤開発の足がかりになる成果。米科学誌キャンサー・セル(電子版)に19日掲載された。
マウスの大腸のがん細胞と肝臓や肺に転移したがん細胞とを比べ、働く遺伝子の違いを調べた。転移例ではAesという遺伝子が作るたんぱく質の量が減っていた。このAesは転移の引き金となる信号伝達を妨げて、転移を抑えていた。
実際の大腸がん患者でも、肝臓に転移したがん細胞ではAesからできるたんぱく質の量が減少していた。大腸のがん細胞を調べると転移がない患者ではAesが働いているケースが、転移した患者では働いていない例がそれぞれ多かった。
大腸がんのマウスに信号伝達を妨げる薬剤を投与すると、Aes同様に転移が抑えられた。武藤教授は「薬の効果が人でも確かめられれば、他の抗がん剤と組み合わせて使えるのではないか」とみている。
大腸がんは日本人のがんによる死亡者数の中で男性では3位、女性は1位。5年生存率は他臓器への転移がない患者で8~9割だが、転移があると1~2割に下がる。