「1票の格差」訴訟 上告審判決の要旨

2012/10/17付
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2010年の参院選の「1票の格差」を違憲状態とした17日の上告審判決の要旨は次の通り。

【多数意見】

全国選出議員と地方選出議員に分けた参院選制度を定めたことが、国会の有する裁量権の合理的な行使の範囲を超えるものということはできない。だが、激しい社会的、経済的変化の中で生じる人口変動の結果、投票価値の著しい不平等状態が生じ、それが相当期間継続しているにもかかわらず是正しないことが、国会の裁量権の限界を超えると判断される場合には、参院の議員定数配分規定が憲法に違反すると解するのが相当だ。

現行の選挙制度は、人口の都市部への集中による都道府県間の人口格差の拡大が続き、総定数を増やす方法をとるのにも制約がある中で、仕組みを維持しながら投票価値の平等の実現を図るという要求に応えていくことは、もはや著しく困難な状況に至っているというべきだ。にもかかわらず、06年の公選法改正後はこの状態の解消に向けた法改正が行われることのないまま本件選挙に至った。これらの事情を総合考慮すると、本件選挙当時、選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていたというほかはない。

もっとも、最高裁が09年にこうした参院選制度の構造的問題や仕組み自体の見直しの必要性を指摘したのは本件選挙の約9カ月前であり、選挙制度の仕組み自体の見直しについては、検討に相応の時間を要することは認めざるを得ないことなどを考慮すると、本件選挙までの間に参院の議員定数配分規定を改正しなかったことが国会の裁量権の限界を超えるものとはいえない。

投票価値の平等が憲法上の要請であることや、参議院の役割に照らせば、より適切な民意の反映が可能となるよう、単に一部の選挙区の定数を増減するにとどまらず、都道府県を単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしかるべき形で改めるなど、現行選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置を講じ、できるだけ速やかに違憲の問題が生ずる不平等状態を解消する必要がある。

【個別意見】

▽桜井龍子裁判官

本件選挙や過去の参院選の推移を見ると、選挙区間の格差が1対5前後かそれ以上の状態で既に40年以上経過してきており、本件選挙当時の投票価値の不均衡は、もはや早急に是正すべき状態に達しているといわざるを得ない。

▽金築誠志裁判官

選挙制度の仕組み自体の見直しに関しては、議員定数削減の流れの中で、選挙区選出議員の総数を増加させることは考え難く、事実上、選挙区を現在より大きな単位に拡大するという方法しか残らないのではないか。

▽千葉勝美裁判官

立法府においては、さまざまな観点からの専門的で多角的な検討を十分に行った上で、二院制にかかる憲法の趣旨や参議院の果たすべき役割、機能をしっかり捉えて制度設計を行うなど、相応の時間をかけて周到に裁量権を行使する必要がある。

▽竹内行夫裁判官

参院議員選挙制度の仕組みを検討するに当たっては、参院のあり方にふさわしい選挙制度の仕組みの基本となる理念や政策的目的などを国民に速やかに提示し、具体的な検討を行うことが強く望まれる。

▽田原睦夫裁判官

本件選挙の投票価値における著しい不平等が許容される理由について合理的理由を見いだすことはできず、その不平等は憲法14条に違反し違憲状態にあるといわざるを得ない。13年参院選が現行法の枠組みの下で行われるならば、選挙無効の判断をもって対処すべきものと考える。

▽須藤正彦裁判官

06年の最高裁判決以降、ほとんど是正措置が講じられることがないまま著しい不平等状態が慢性的に維持されてきているといわざるを得ない。かかる立法不作為は立法裁量権の限界を超えており、憲法に違反していたというべきだ。13年参院選でも改変に見るべきものがなければ、選挙無効訴訟の提起された選挙区に限って選挙を無効とせざるを得ない。

▽大橋正春裁判官

立法府は、どのような困難があるために改革の前進が妨げられているかなどについて、国民の前に一向に明らかにしていない。本件選挙については憲法の違反があったと判断せざるを得ない。〔共同〕

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