インスリンが記憶に作用 東大、仕組み解明
東京大学の飯野雄一教授らは糖尿病の治療薬であるインスリンが記憶や学習の仕組みに関わる仕組みを突き止めた。線虫を使った実験でわかった。インスリンを受け取るたんぱく質が情報伝達を担うシナプス領域に運ばれ、機能を高めていた。成果は18日付の米科学誌サイエンスに掲載された。
実験では体長約1ミリの線虫「C・エレガンス」を使った。線虫を構成する約1000個の細胞のうち3割が神経細胞で、細胞間の働きを観察するモデルとなる。線虫は餌を得られず飢餓状態になると、それを記憶する。このときに脳の神経細胞にあるインスリンが関わることが知られていたが、詳しい仕組みは分かっていなかった。
研究チームはインスリンを受け取るたんぱく質に大小2つのタイプがあることを見つけた。大きいたんぱく質はシナプス領域に運ばれ、「PI3キナーゼ」というたんぱく質の働きを強めて飢餓の記憶を促していた。
人間にもインスリンを受け取るたんぱく質が大小2つある。認知症などが起きる仕組みの解明にもつながる。