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1票の格差、動かぬ国会に是正迫る 衆参で「違憲状態」

最高裁、選挙制度の問題点に言及

参院選の「1票の格差」を巡る訴訟で、最高裁大法廷は17日、違憲状態との判断を示すとともに、「都道府県を単位とする選挙区を改める必要がある」と、現行の選挙制度の具体的な問題点に初めて言及した。選挙制度の見直しを求める異例の指摘をした前回の大法廷判決から4年余り。再三の是正要求にもかかわらず抜本的な改善に向けた動きをみせない国会に、司法が"最後通告"を突きつけた形だ。

大法廷は前回07年参院選を巡る判決(09年9月)で「現行の選挙制度を維持する限り、格差の大幅な縮小は困難」と異例の指摘をしていたが、今回はさらに踏み込んで国会に制度改正を迫ったといえる。

参院の選挙制度は、議員が「地域代表」との性格を持つことから選挙区を都道府県ごとに設定。3年ごとに半数を改選するため、人口の少ない県にも最低2議席を割り当てている。現行の制度下で格差を是正するには、人口が集中する都市部の議席数を大幅に増やすしかないのが現状だ。

こうした参院選の持つ制度の特殊性については、多数意見の補足意見で「都道府県単位の選挙区は、各地方・地域の実情を国政に十分反映させる方策として唯一のものではない」(金築誠志裁判官)など厳しい指摘が相次いだ。

また、反対意見では事態の改善に向けて積極的な動きを見せない国会の姿勢に対する批判も目立った。

 実際、最高裁が繰り返し求めてきた格差是正の要求に国会が十分応えてきたとは言い難い。最高裁は01年参院選の判決(04年)で合憲と判断する一方、多数意見の4裁判官が「違憲と考える余地もある」と指摘。しかし、国会は06年に「4増4減」とする定数是正を行っただけで、その後の抜本的解消はなかった。

選挙制度の見直しを求めた2007年選挙の判決を受け、今年8月に提出された「4増4減」の定数是正案も、参院を通過しながら継続審議となった。ただ、仮に成立しても格差の縮小は4.75倍程度にとどまる。

「6倍」とみられてきた参院選の格差を巡る合憲・違憲の分岐点を厳しく修正した今回の判決は、投票価値の不平等を放置し続ける政治の怠慢に、司法が従来にない厳しい目を向けたものだ。

一方の衆院選でも、大法廷は昨年3月の判決で、小選挙区の定数を最初に都道府県に1議席ずつ割り振る「1人別枠方式」について、定数の人口比例配分をゆがめていると指摘したが、廃止に向けた動きはみられない。

法曹関係者の間では「近い将来、衆参両院ともに違憲判決が下るという前例のない事態に陥る恐れがある」との声も上がり、国会には早急に選挙制度の抜本改正に踏み出すことが求められている。

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