大学の「大相撲化」を 求められるプロ意識 黒川清・政策研究大学院大教授
大学開国インタビュー(4)

2013/1/20 2:00
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 グローバル化が加速する時代に、大学はどう変わるべきなのか――。日本経済新聞朝刊1面の連載企画「大学開国」は、東京大学の秋入学構想をきっかけに本格化した大学改革のうねりとその深層をとらえてきた。第6部「改革への提言」の連載に合わせて、大学のトップや各界の有識者にインタビューし、改革のキーポイントを指摘してもらった。

 科学者の立場から国に政策提言する日本学術会議会長や国会の福島原子力発電所事故調査委員会委員長などを務め、長年「日本は知の鎖国状態にある」と指摘してきた黒川清・政策研究大学院大教授に日本の大学や社会が抱える課題や処方箋を聞いた。

――日本の大学の課題は

黒川清・政策研究大学院大学教授

黒川清・政策研究大学院大学教授

 「日本の大学教員にはプロフェッショナリズムがない。研究の評価はできても、教育への評価は不十分だ。今まではいったん大学に入れば、ほぼ自動的に卒業ができ、社会に出るという1本の道しかなかった。今は数年先の将来すら見通せない時代なのに、学生は教員の話をどう聞けばいいのか。大学はお互いに学び合う場所であり、教員も常に学び、将来どんな人生を歩みたいかをもっと学生と語るようになるべきだ」

 「利権が多い立場にいる教員ほど、改革に二の足を踏みがちだが、自ら学生に選択肢を示すことが大切だ。東大を卒業して大蔵省(現財務省)に入ったということではなく、どれだけ個人の立場で活躍しているかが重要な時代になっている。研究にしても大学教授を何人出すかではなく、自分を超える研究者や世界で活躍する人材を何人育てられるかだ。学生にやりたいことを見つけさせることが使命であり、それが世界の中での大学の価値につながる。特にトップ大学の教員は、グローバル社会で活躍できる人材をどれだけ輩出できるかを念頭に動いてほしい」

――「知の鎖国状態」は今も変わっていないと考えるか

 「変わっていないだろう。私はかねて『日本の大学の大相撲化を』と主張してきた。今も相撲界は番付の高い力士ほど外国人比率が高いが、特に問題は起きていないでしょう。日本の大学への留学生が少ない理由の1つは日本語授業だ。例えば、国が各大学の学生の一定数を留学生にすることに決めれば、教員は授業を英語でやらざるを得なくなるし、緊張感も出る。下手でもいいからやることで、日本人学生も安心する」

 「大学教員は過去のシステムを変えることを極端に嫌がる。世界中が日本を見ているのに、自己都合でできない理由ばかりを探していないか。役所や企業の体質も同じで、組織的なガバナンスができていない。東日本大震災や原発事故の際の対応で未熟さが世界に露呈してしまった。広報や情報発信も重要だが、ホームページの英語版が不十分なところが多い。大きなインパクトがなければ、組織は変わらない。海外から学長を招いたり、女性幹部を増やしたりするなど、思い切った取り組みをしてもらいたい」

――社会の意識改革も必要だ

 「日本社会は異端を受け入れたがらない。面接担当は自分を負かせそうな人は選ばないから、留学などを経験した若者がいまだに就職に苦労してしまう。年功序列が色濃く残る異常なタテ社会の日本で、大学は比較的自由度が高いはずだ。教員が多様な選択肢を示し、学生が自信を持って能動的に職業を選べるようになれば、今のような学生が受け身にならざるを得ない就職の慣行もなくなるだろう。大学が社会を変える見本を見せないといけない」

――期待する学生像は

 「できるだけ海外に目を向けてほしい。特に学部時代の休学、留学を勧めたい。欧米の主要大は、学部生向けにアジアやアフリカなどに行くプログラムを多く作り、参加を推奨している。世界の情勢やマーケットを肌で感じることで価値観が変わるし、日本を意識しはじめ、挫折を乗り越えた先に達成感が得られる。視野を広げ、ネットワークができると、帰国後の活動の動機づけにもなる。やりたいことが見つかれば、学生は情熱を傾けて何事にも真剣に取り組むようになる。私は若いうちから独立心を持ってもらいたいと思い、よく『休学のススメ』という話をしている。共感してくれる学生は多いが、一部の大学ではいまだに休学中も学費納付を求めている。これはぜひ改めてほしい」

 黒川清氏(くろかわ・きよし) 1962年東京大医学部卒、医学博士。69~84年に米国に滞在し、79年米UCLA教授。東大教授、日本学術会議会長、内閣特別顧問などを歴任し2006年から現職。国会の福島原子力発電所事故調査委員会委員長を務めた。

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