iPS使わずに心筋を効率的に再生 慶大が手法開発
慶応義塾大の家田真樹特任講師らは、人の心臓の拍動しない細胞を、拍動する心筋細胞に効率的に作りかえる手法を開発した。6種類の遺伝子などを入れて変化させる。心筋梗塞患者の体内で心臓の細胞を直接作りかえれば、万能細胞のiPS細胞を使う場合よりも短時間で治療ができ、負担の少ない再生医療につながるとしている。
成果は欧州科学雑誌EMBOジャーナルの電子版に掲載された。
心臓には拍動を作り出す心筋細胞と、形の維持などにかかわる線維芽細胞がある。研究チームは5種類の遺伝子を入れて線維芽細胞を心筋細胞に変えることに成功していたが、1カ月で2.4%しか変わらず効率が悪かった。
今回、「miR-133」という小さな核酸も同時に入れたところ、線維芽細胞の特徴を保つ働きが弱まり、約28%の細胞が心筋細胞に変化した。すでにマウスを使った実験では体内の細胞を変えることもできている。
iPS細胞を心筋細胞に育て外部から補う研究も進むが、育成に約2カ月かかり、細胞の移植には開胸手術も必要だ。新手法では細い管を使って体内の心臓の線維芽細胞に遺伝子を導入するため、手術の負担も軽くできるとみている。