父子関係、最高裁で弁論 DNA鑑定か、民法「嫡出推定」か
結婚後に生まれた子が、夫以外の男性と血縁関係があることがDNA鑑定で分かった場合、戸籍上の親子関係を取り消せるかが争われた2件の訴訟で、最高裁第1小法廷(白木勇裁判長)は9日午後、当事者の主張を聞く弁論を開いた。最新の科学鑑定による血縁関係の証明が、婚姻中の妊娠は夫の子とする民法の「嫡出推定」の原則に照らしてどう判断されるかが焦点となっている。
同小法廷はこの日、北海道の元夫妻と、関西の夫妻のケースの2件を続けて審理した。判決は7月17日に言い渡される。
いずれのケースも、夫以外の別の男性の子を出産した妻側が「子の父は99.99%夫以外の別の男性」とする最新のDNA鑑定をもとに、夫と子の間に法律上の親子関係が存在しないことの確認を求めて提訴。一、二審はいずれも、戸籍関係よりDNAによる血縁関係を優先する判断を示し、妻側の訴えを認めた。
この日の弁論で、北海道の元妻側は「訴えが認められなければ、真実に反する親子関係が一生強制される」と主張。関西の妻側も「(DNA鑑定の存在など)特別な事情がある場合は嫡出推定の例外を認めるべきだ」として、戸籍上の父ではなく、現在、子を養育している血縁上の父を法律上の父とすべきだと訴えた。
一方、関西の夫側は、嫡出推定は親子関係を早期に確定して子の立場の安定を図ることが目的だとして、「妻が意のままに親子関係を否定できることになれば、法の趣旨に反する」と反論した。
北海道の元夫側も「血縁がないことを理由に親子関係を否定するのは、養子縁組を認めている民法の趣旨と矛盾する」と訴えた。
弁論後、関西の夫は「親子の絆は愛情を注いで築くもの。DNA鑑定だけで引き裂かれるのは受け入れられない」とコメントを出した。北海道の元夫も「DNA鑑定で親子関係を確定するなら、出産時に全員の鑑定をすべきだが、それでいいのか」と疑問を呈した。
「親子ではない」として嫡出否認を訴えられるのは夫側のみで、それも「子の出生を知ってから1年以内」に限られている。早期に親子関係を確定し、子の福祉に悪影響が出ないようにする趣旨とされる。
嫡出推定が及ぶ場合は、親子関係が存在しないことの確認を求める訴訟を起こしても「不適法」として退けられる。嫡出推定の対象外となる条件について、最高裁は判例で「事実上の離婚や遠隔地の居住などで、夫の子を懐胎する可能性がないことが外観上明白な場合」に限定している。