筋力低下の原因遺伝子発見 東大など発見、難病ALS解明に道
運動神経が変化し、肩や腰など体の中心に近い部分の筋力が低下していく遺伝性の病気「近位筋優位遺伝性運動感覚ニューロパチー」の原因遺伝子を見つけたと、東大と徳島大のチームが9日付の米専門誌に発表した。
この病気は、全身の筋力が低下する難病「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」と運動神経の細胞が死んでいく仕組みや症状が似ており、東大の辻省次教授は「ALSをはじめとした運動ニューロン病に対する治療薬開発の基礎になる」と話した。
チームは高速にDNAの配列を解析できる機器を使い、家族に発症した人がいる西日本の4家系32人の血液を分析。うち発症した13人全てで「TFG」という遺伝子に変異が起きていた。
TFGは細胞内でタンパク質を運ぶことに関わっており、変異して運ぶ機能が低下すると「TDP43」という別のタンパク質が細胞内に異常に蓄積して運動神経の細胞死につながっていた。
このTDP43はほとんどのALS患者の脊髄でも蓄積することが分かっており、チームは「ALSと共通のメカニズムで運動神経の細胞死が起きている」とみている。
チームによると、今回、原因遺伝子を見つけた病気は10~15年で呼吸筋の筋力が低下。感覚神経にも障害が出るなど多くのALSとは異なった症状もあるが、ALSの一種と診断されるケースがあるという。〔共同〕