セシウム検出時のコメ出荷制限、弾力運用 13年産から
東京電力福島第1原発事故で放射性セシウムが検出されたコメ生産地の出荷制限を、政府が2013年産から弾力的に運用することが8日、分かった。従来は1カ所でも基準値を超えれば市町村か合併前の旧市町村単位で出荷を止めるのが原則だったが、各市町村の複数地点の検査で汚染の範囲を調べ、広がりがない場合は制限を見送るよう改めた。
基準値を超えた12年産米は福島県の農家16戸と宮城県の1戸で見つかった。市町村単位で見ると、複数の農家から汚染米が見つかるケースは少なく、すぐに制限の網をかけるのは実態に合わないとの理由だ。
出荷制限は産地のイメージ低下に直結するため、被災地の自治体や農業関係者は評価している半面、消費者団体からは「主食なのに大丈夫か」と不安の声も出ている。
コメのセシウムの基準値は、1キログラム当たり100ベクレル。福島県は出荷を制限する対象を、旧市町村ごとにエリア分けしている。農林水産省によると、基準値を超えた福島の農家16戸のうち12戸は1つのエリアに1戸ずつ。残り4戸は2つのエリアにそれぞれ2戸という分布状況だった。
基準値を超えたコメ農家は、セシウムの吸収抑制効果があるカリウムの散布が不十分な傾向があったという。農水省は「土壌の性質でもセシウムの吸収度合いに差があるため、田んぼごとに検査結果を見て分析する必要がある」と説明している。
野菜や果物はこれまでも1カ所で基準値を超えた作物が見つかった場合、原則として複数地点の検査で地域の広がりを踏まえて制限する扱いにしてきたが、コメは厳格な運用をしていた。政府は3月、コメに関する運用の見直しを原子力災害対策本部で決めた。〔共同〕