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北アの遭難、生かされなかった防寒着 猛吹雪で判断力低下か

北アルプスの白馬岳(2932メートル)で6人が死亡した遭難事故で、一行は非常時に備えたダウンジャケットやツェルト(簡易テント)を持っていたことが長野県の白馬村山岳遭難防止対策協会(遭対協)への取材で分かった。当初は装備不足が指摘されたが、実際は天候急変で雨と吹雪にさらされ、低体温症で命を奪われたとみられる。専門家は「装備の適切な使用や進退を決める判断力が重要」と指摘する。

5日午前、新潟、長野、富山県境の「三国境」付近稜線(りょうせん)で、北九州市の医師ら60~70代の6人が倒れているのを登山者が発見した。いずれもTシャツ、雨具などの薄着で、体全体が凍り付いたような状態だったことから「山を甘く見ていたのでは」との見方もあった。

しかし、医師会の仲間によると、70歳を過ぎて登山を始めた1人を除けば「全員がベテラン」。大学時代から山登りを続け、日本の3千メートル級の山をほぼ制覇した人や、アフリカ最高峰キリマンジャロ、アルプスのマッターホルン登頂経験者もいた。

遭対協によると、7日現場から回収されたリュックは4個で、容量はいずれも60リットル程度。全てに薄いダウンジャケットが入っていた。現場には「ツェルト」と呼ばれる簡易テントが残っていた。回収した山岳関係者は「全然軽装じゃない」と言い切った。

なぜ、持っているのに着なかったのか。専門家は「着込むタイミングの難しさ」を指摘する。「行動中は体温が上がり汗をかくため、悪天候時でもあまり着込まないこともある」と話すのは、登山用品店「カモシカスポーツ」(東京都)の佐藤日出雄統括部長(60)。

別の登山者らの話では、6人が栂池ヒュッテを出発した4日午前、白馬岳周辺は晴れて汗ばむほどだった。しかし午後から天候は荒れ、雨の後、猛烈な吹雪となった。

白馬大池をすぎて稜線に上がると、さらに風にさらされる。6人が見つかったのは「吹きさらしで、隠れるところがない場所」(救助関係者)で、ビバークするための雪洞を掘るには雪が硬く、十分な積雪量もなかった。周囲は踏み固められ、ツェルトをリュックから出して使おうとした形跡があった。

山の事故に詳しい関西大の青山千彰教授(危機情報論)は「医師もおり、低体温症の知識はあったはず。防寒具を使わなかったのは重症化が急激に進んで判断力が低下したからでは」と推測する。

低体温症に詳しい苫小牧東病院副院長の船木上総医師(56)によると、中高年者は血管が収縮する機能が低下し、低温に対する抵抗力が落ちている。同医師は「面倒がらず、天候に合わせて頻繁に服装を変えることが重要」と強調。体温を維持するため簡単に食べられる食料や防寒着を取り出しやすいところに入れるようアドバイスしている。〔共同〕

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