過労ストレスで急性アル中死、会社に5900万円賠償命令
過労で精神疾患を発症して酒を飲み過ぎ、急性アルコール中毒で死亡したシステムエンジニアの男性(当時25)の両親が勤務先に1億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が7日、東京地裁であり、上田哲裁判長は会社の責任を認めて約5900万円の支払いを命じた。
原告側の川人博弁護士によると、過労死を巡る訴訟で、精神疾患による急性アルコール中毒死に対する会社の責任が認められるのは初めて。男性に対しては中央労働基準監督署が2007年に労災認定している。
原告側によると、男性は03年、システム開発のフォーカスシステムズ(東京)に入社。05年ごろから月によっては残業が100時間を超すなど勤務時間が長くなった。06年9月、突然無断欠勤して京都に行き、鴨川沿いでウイスキーを一気に飲んで死亡した。
上田裁判長は男性の行動が、突然放浪するなどの症状がみられる精神疾患の「乖離(かいり)性遁走(とんそう)」によるものと認定。死亡と業務の因果関係を認め「長時間勤務の負担を軽減するための安全配慮義務違反があった」と会社の責任を指摘した。
賠償金額の算定に当たっては男性が夜中に個人のブログを執筆していたことが睡眠不足に影響した可能性なども考慮、一部を過失相殺した。
男性の父親(65)は判決後に記者会見し「会社が責任を認めないので提訴した。同じような事故が起きないよう、使用者側は十分配慮すべきだ」と話した。